2019 Fiscal Year Research-status Report
Catalytic Formation of Unsaturated Isonitriles and Their Applications
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19K15548
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
百合野 大雅 北海道大学, 工学研究院, 助教 (20771504)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ビニルイソニトリル / 求核的イソシアノ化 / アンビデント / Pd触媒 / イソシアノ化 / ピロール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、ビニルイソニトリル 、および、分岐鎖型アリルイソニトリル をはじめとした複数の不飽和イソニトリル の触媒的合成法の実現とその応用を目的としている。申請者はこれまでにシアン化トリメチルシリル(TMSCN)をシアニド源とし、Pd塩やAg塩を触媒とすることで、アリル求電子剤やベンジル求電子剤に対し、効率よくイソシアノ基を導入する手法を見出している。適切にデザインした求電子剤に対し、本反応を適用することで、有用な合成素子と看做されてきたにもかかわらず、効率的な供給が困難であった不飽和イソニトリルを容易に得る手法の実現を目指してきた。 申請者は、アリル求電子剤の脱離基のα位に電子求引性官能基であるエステルを導入することを着想した。実際、そのような基質を設計し、イソシアノ化反応に付したところ、想像した通りγ位選択的アリル位イソシアノ化反応とオレフィンの異性化が連続的に進行し、対応するビニルイソニトリル を高収率で得ることに成功した。基質にもよるが、その収率は最大で89%に至ることを見出した。得られたイソニトリル に対し、塩基、および、銀触媒を採用し加熱することで対応する2置換ピロールへと速やかに変換する方法を見出した。詳細な反応機構研究から、本反応がイソシアノ化反応と異性化反応の二段階がバラバラに進行するもの、特に二段階目の異性化反応は分子内でのプロトン移動により進行していることを強く示唆する結果を得た。 本手法の実現により、これまで入手の困難であったビニルイソニトリル の合成法とその活用法の一つを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記に示したとおり、触媒的求核的イソシアノ化によるビニルイソニトリル合成法の開発に成功した。またその変換により対応するピロールを良好な収率で得ることに成功した。これらの結果は、当初想定した機構を、研究の進捗を強く支持するものである。また、詳細な反応機構検討からイソシアノ化反応と続く異性化反応について重大な情報を得ることができた。すなわち、求核的イソシアノ化反応は従来、SN1型の置換様式で進行していたとされていた。他方、本反応の第一段階であるγ位選択的イソシアノ化反応は、求核剤であるTMSCNの濃度に大きく依存し、SN2'型の置換様式で進行しているのではないかということが推測された。現在これらを踏まえた論文を執筆中である。 研究の過程で、新たなビニル位イソシアノ化反応、ジエン形成を伴ったビニル位イソシアノ化反応、プロパルギル位イソシアノ化反応、および、ホモアリル位イソシアノ化反応を見出しており、これらについても近い将来公開できればと考えている。 加えて、アリルリン酸エステルを用いた種々の変換反応についても開発を進めており、Al(OTf)3を触媒とした脱離基選択的Friedel-Crafts反応、シリルシアノメタラート触媒による位置選択的Friedel-Crafts反応の実現にも成功し、それぞれ査読付き学術誌に報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
先に示した、新パターンのビニル位イソシアノ化反応、ホモアリル位イソシアの過反応のそれぞれを実現する。分岐鎖型アリル位イソシアノ化反応の実現には未だ至っていないが、今後効率的な手法の開発を目指していく。また、得られたビニルイソニトリル からピロール以外のヘテロ環化合物への変換やアリルイソニトリル、ホモアリルイソニトリル などあらたなイソニトリル を用いた有用化合物への変換にも積極的に取り組んでいく。特に分岐鎖型アリル位イソシアノ化反応については、適切な触媒ライブラリーを構築し、迅速な触媒探索により目的生生物が得られる条件を効率的に探索していく計画である。
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Causes of Carryover |
大きな理由として、新型コロナウイルス の蔓延に従い、当初自身を含む5名が参加を予定していた日本化学会第100春季年会への旅費が、その中止に伴い大幅に削減されたためと考えられる。不測の事態であり、意見交換の機会を失ったことも含め、学会が中止になったことは誠に残念ではあったが、軽減された費用の分を消耗品や設備費に当てることで引き続き研究を推進していきたい。
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