2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K15549
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池内 和忠 北海道大学, 理学研究院, 助教 (70756676)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ツチン / コリアミルチン / 植物毒 / 全合成 / 5,6-cis縮環 / 分子内環化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドクウツギ科植物に含まれるツチン及びコリアミルチンは神経毒として知られており、古くから生物研究が行われてきた天然物である。一方でツチン配糖体をはじめとする最近単離された類縁体は毒性を有さないことが確認されている。構造の微妙な違いによって活性が変化したと考えられるが、その理由は明らかではない。そこで、本研究は全合成によるこれら天然物の化学供給を目的とする。 2019年度はコリアミルチンの全合成研究に取り組んだ。標的天然物は多数の酸素官能基が置換した5,6-cis縮環骨格を母骨格に有しているため、その立体選択的構築が課題となる。本骨格は独自で見出している分子内環化反応を用いて構築した。すなわち、シクロペンタ-1,3-ジケトン構造を5位に有するペンタナール誘導体にL-プロリンを反応させる事で、系中で生じるエナミンからケトンに対する分子内攻撃を進行させ、望みの骨格を得た。本反応は、二つあるケトンの片方のみに化学選択的かつ高立体選択的に反応し、縮環位の第四級不斉炭素及び四置換不斉炭素を含む三連続不斉中心を一挙に構築することができた。また、本反応の条件最適化も合わせて行い、望みの選択性を発現するために、過剰量のL-プロリンを低温で反応させる事が必要不可欠であることを明らかにした。得られた化合物の5員環部をさらに官能基修飾し、6員環部にラクトンを形成する事で、過去に報告されたコリアミルチンの全合成経路の中間体に誘導した。これにより、コリアミルチンの形式全合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コリアミルチンの形式全合成を達成し、想定しているツチンの全合成経路の鍵となる変換工程を把握することができた。ツチンは、コリアミルチンの6員環上にヒドロキシ基をさらに有する天然物であるため、コリアミルチンの合成に用いた基質を少し変更するだけでツチンに誘導可能と考えている。またツチンが合成できればツチン配糖体やコリアントンの合成への展開も容易に見込める。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、これまでの知見を利用しツチン、コリアントンの合成に着手する。その後、ツチン前駆体を用いてグリコシル化反応によるグルコシド結合の形成によりツチン配糖体を合成する。
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Research Products
(1 results)