2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of Palladium-Catalyzed Stereoselective Enolate-Nucleophile Coupling Reactions
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19K15550
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
土井 良平 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (40780052)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | パラジウム触媒 / C-O結合活性化 / エノラート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、触媒的なパラジウムエノラート形成を基軸としたエナンチオ選択的な炭素-炭素結合形成反応の開発を目的としている。従来法では塩基を用いてエノラートを形成したあと、遷移金属塩とのトランスメタル化により遷移金属エノラートを発生させる。一方で本研究では、カルボニル化合物のアルファ位にて、炭素-酸素結合の酸化的付加を起こすことで直接的にパラジウムエノラートを形成させる。これにより、反応系内で生じるエノラート種の種類を制御することが期待され、反応条件を高度に制御できると期待される。 本年度は、昨年度見出したケトンの脱炭酸型ポリフルオロアリール化反応の研究をさらに検討した。その結果、様々なポリフルオロアレーン誘導体に適用可能であることを見出した。ポリフルオロアレーンのフッ素の数を減らすと一般に脱炭酸が起こりにくくなることが知られており、本反応系においても、同様の傾向がみられた。そこで、再度配位子のスクリーニングを行ったところ、フッ素が多い(ペンタフルオロ安息香酸)場合では中程度の結果を与えたホスフィン配位子Ruphosを用いた場合に、良好な収率で所望の反応が進行することを見出した。これにより、適用範囲の幅は広がったものの、より一般的な手法にするためには更なる改善が必要と考えられる。 目標としているエナンチオ選択的な反応の足掛かりとなりうる知見も得た。分子内に不飽和炭素部位を有するヒドロキシケトン誘導体を用いて反応を検討したところ、エノラートが挿入反応を起こした生成物が得られた。本反応はエナンチオ選択的なビルディングブロック構築に展開できる可能性を有しており、今後更なる検討を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脱炭酸フルオロアリール化反応について、基質適用範囲の探索や反応機構に関する実験を行い、その結果をまとめて学術論文として発表するに至った。当初計画していた、不斉反応の開発には未だ成功していないものの、その足掛かりとなりうる実験結果を得た。すなわち、直接的にエノラートを反応させるのではなく、不飽和成分をうまく反応に関与させることで不斉点を構築する方法を模索し、実際に反応が進行する条件を見出した。 以上、課題の初期段階については論文として公表しており、また目的に向けた足掛かりも見出しているため、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに見出した、エノラートと不飽和成分の反応に関してさらに検討を進める。反応の収率が芳しくないため、収率向上を目指して触媒や溶媒など反応条件の精査を行っていく。また、原料化合物の合成が比較的煩雑であるため、分子間反応の検討も同時に進めていく。目的とするエナンチオ選択的な反応の開発にも着手する。キラル配位子を用いた反応条件のスクリーニングを行い、触媒によるエノラートの反応性制御を目指す。 上述した方法では、炭素-酸素結合の切断を基軸としているが、炭素-フッ素結合切断についても新たに検討を開始したいと考えている。これまでは酸素に限定して検討を進めてきたが、フッ素も検討していくことで、使える化合物の幅が大きく広がると期待している。炭素-フッ素結合の還元的切断によりエノラートを発生させることで、不斉反応開発につなげたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウイルス感染拡大による研究中断に伴い、消耗品費用の未使用が生じた。同様に論文執筆作業にも影響が出ており、計上していた機器データ収集の費用や英文校正費用にも未使用額が生じた。本年度の未使用額は、次年度行う実験の消耗品購入費用として使用する。また、年度後半には論文執筆にとりかかり、本年度使用予定だった予算を使用する。
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Research Products
(3 results)