2020 Fiscal Year Research-status Report
金属-配位子協働的C-H結合切断を鍵とする単純アルカンからの精密有機合成
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19K15558
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楠本 周平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60737831)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 金属配位子協働 / 酸化的付加 / 炭素水素結合 / メタン / イリジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
シクロペンタジエノンイリジウム(I)ヒドリド錯体を合成し、炭素ー水素結合の切断活性の評価を行った。メタンやヘキサンといった不活性なsp3混成炭素と水素間の結合の切断に成功した。また炭素-炭素結合の脱水素反応に応用することで温和な条件下でのテトラヒドロフランの移動脱水素化反応を達成した。 シクロペンタジエノン上の置換基としてフェニル基、メチル基、アルコキシカルボニル基、芳香環縮環など種々の構造とC-H結合切断に対する反応自由エネルギー変化をDFT計算により見積もることで、電子不足シクロペンタジエノン配位子を有するイリジウム錯体を設計し、実際に合成した。得られた1価イリジウムヒドリド錯体は重ベンゼン中で速やかにイリジウムヒドリドのH/D交換反応を起こした。さらに重ベンゼン及び重トルエンを重水素減とする芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物、ケトン、エステル、脂肪族単純炭化水素化合物のH/D交換反応を触媒することを確認した。 速度論解析等により炭素ー水素結合切断の段階における遷移状態が2つのイリジウム錯体が関与する協奏的な機構であることが示唆された。 さらに、テトラヒドロフランとノルボルネンの混合物にイリジウム錯体を加え70度に加温することで錯体に対して7当量のフランの生成が確認された。 以上の結果は金属配位子協働的なsp3 C-H結合酸化的付加という新規素反応の開発とそれを応用することでこれまでで最も低温でのエーテル類の脱水素を達成した重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
最も困難であると考えられるメタンのC-H結合切断を確認することができた。さらに詳細な速度論解析により複核での特異な協奏的機構が関与していることを見出した。本成果に基づき更なる高性能金属錯体の設計が可能になったという点は当初予想していなかった成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
DFT計算によりイリジウムだけでなくコバルトなどの豊富に存在する金属でもメタンに代表される低級アルカン類の官能基化が可能であることが示唆された。これに基づきこんごはイリジウム錯体に加え、類似のコバルト錯体の合成、反応性の調査も行う。 また、反応機構研究により2つのイリジウム錯体が関与する機構が提唱されたことから、遷移状態でのエントロピーロスを軽減し高活性なC-H変換反応を実現するため、複核シクロペンタジエノン金属錯体の設計、合成をおこなうよていである。
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Research Products
(9 results)