2019 Fiscal Year Research-status Report
Alkane transformation via 1,2-addition of C-H bods
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19K15561
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中野 遼 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (30835731)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金属配位子協働触媒 / π供与性配位子 |
Outline of Annual Research Achievements |
持続的な炭素資源の運用法の確立は21世紀の化学者に与えられた最も重要な課題の一つであり, アルカンの官能基化は従来燃料として用いられ て来た炭素資源を有用な化学原料へ変換する方法として注目を集める. 従来の均一系アルカン変換反応の多くは中心金属の酸化還元を伴うC-H 結合切断を起点とする. したがって適切な結合活性化能をもつ金属である貴金属類の利用が避けられない. 本研究はアルカンC-Hの金属-ヘテロ 原子多重結合への1,2-付加という素反応に着目し, アルカンの脱水素化や低級アルカンの高級化などの高難度反応を安価な卑近金属で行うことを目的とする. 初年度は配位子のライブラリ構築, 錯体の合成法確立, 初期反応検討を行う計画であった. 提案するグアニジド部位は単座配位子として前周期遷移金属とよく用いられている一方, 占有d電子との電子反発の大きい後周期遷移金属と単座で配位する例は非常に少ない. また単座グアニジド部位を多座配位子の一部として組み込んだ配位子の例も非常に限られる. まず, グアニジド部位を有する三座配位子および二座配位子それぞれの合成経路を最適化し, いずれの配位子についても3-4工程という短工程でグラムスケールでの合成が可能となった.また, 金属錯体の合成検討を行い鉄, ルテニウム, コバルト, ロジウム, パラジウム等の金属錯体の単離に至った. いずれの錯体についても各種分光法およびX線結晶構造解析を用いて構造決定を行った. 初期反応検討については主にロジウム錯体について行ない研究計画に述べたグアニジド部位の協奏的作用に着目した反応に加え, グアニジンの特異な電子授受性に着目した反応の検討を行なった. これら内容の一部については国際学会にて発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように初年度に予定した検討をほぼ網羅した. 特に配位子合成経路を当初提案していたカルベンとアジドのスタウディンガー反応から求核的イミノ化へ変更することによって, グアニジン部位への置換基導入や多座配位部位の導入の自由度が大きく広がっており次年度の錯体設計につながると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り, 本年度は初年度に合成した錯体群を用いて目的の配位子協働触媒作用を生かした反応開発を中心に行う. 当初ある程度予測された点ではあるが, グアニジン部位の大きな極性により錯体の脂肪族炭化水素への溶解性が不十分であることが分かっている. そこで初年度に確立した合成経路を用いてより脂溶性を高めた配位子の合成を行なっていく. また進捗状況で触れたようにグアニジンの特異な電子授受性に着目した反応の検討も継続して行う. 量子化学計算を用いた検討において, グアニジンとd6, d8金属とのπ電子反発が非常に大きく,占有d軌道準位に当初の予測より大きな摂動が加わることが明らかになってきた. この特徴を利用した従来型の2電子酸化還元を伴う反応については, 素反応レベルで従来の触媒系では進行しない反応がいくつか見出されており, 触媒サイクルの素過程として利用する検討を行なっていく.
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Causes of Carryover |
日本化学会年会等の年度末の学会が全て中止となり, 本年度は予算執行の都合で180,829円が次年度へと繰り越しになったが、これは次年度に請求する研究費と合わせて使用する. 特に試薬やガラス器具など消耗品の購入や国内外で研究成果を発表する際の旅費などにあてる予定である.
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Research Products
(1 results)