2019 Fiscal Year Research-status Report
金属トロポノイド錯体を用いた触媒的分子変換反応の開発
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19K15564
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
兒玉 拓也 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80823989)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トロポノイド / 遷移金属錯体 / 不活性結合活性化 / 金属ー配位子共同作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在汎用されているShvo型錯体の配位子であるシクロペンタジエノンに対し、本研究で着目したトロポン誘導体の配位子としての性質は未詳な部分が多い。そこで、錯体の合成に先立ち、置換基および縮環様式の異なる種々のトロポン誘導体を合成し、その構造的特徴を明らかにするとともに、プロトン源に対する反応性の違いを調査した。ベンゾトロポン誘導体に関しては、プロトン付加体であるヒドロキシトロピリウムの単離にも成功しており、構造的、および磁気的観点から芳香族性を示すことを明らかにした。ヒドロキシトロピリウムの構造解析に関する報告はこれまでわずか2例に限られていた。トロポン誘導体の芳香族性に関する知見は、非ベンゼン系芳香族化合物の化学において重要であり、本研究で得られた知見の学術的意義は大きいと考える。 続いて、トロポン誘導体と種々の金属との錯形成反応を行った。非縮環トロポンを配位子とした錯体は種々の金属において多数報告があるのに対し、縮環トロポンに関してはクロム錯体に限定されていた。種々条件検討の結果、現在までにベンゾトロポン誘導体を配位子とした鉄、ロジウム、およびイリジウム錯体の合成および単離に成功している。得られた錯体に関してはX線結晶構造解析にも成功しており、従来のトロポン誘導体と異なる配位様式を取ることを明らかにした。さらに、触媒量のロジウムベンゾトロポン錯体存在下、ベンジルアルコールとアニリンとの水素移動反応が進行することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
種々のトロポン誘導体の合成および反応性の調査を行い、トロポン誘導体が作業仮説を実現し得る性質を有していることを明らかにした。更に、トロポン誘導体を配位子とした錯体の合成と単離にも成功しており、ロジウム錯体に関しては水素移動反応に対し触媒活性を示すことを明らかにしている。上記の結果を踏まえ、課題の進捗状況は順調である。更に、ニッケルとの錯形成を試みた際、当初の予想とは異なる基質の不活性結合活性化反応が進行することを明らかにしており、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
合成した種々の錯体を用いた触媒的分子変換反応へと展開するとともに、ニッケルを用いた際に進行した基質の不活性結合活性化反応に関しても詳細を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、参加を予定していた日本化学会第100春季年会の中止が判明した。また、感染リスク削減のため、年度末に計画していた実験の延期を余儀なくされた。上記の理由により次年度使用額が生じた。 次年度は本研究提案に係る研究員(大学院生)が使用する実験装置及び反応装置が必要である。研究実施のために、配位子や反応基質・触媒合成のための有機試薬、無機試薬及び実験用のガラス器具類が必要である。研究計画の迅速な実施のため、試薬類・実験器具の拡充と反応装置の補充が必須であり、研究経費の大半は物品費消耗品費として使用する。また、一部を研究成果発表に係る旅費として使用する。
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Research Products
(1 results)