2020 Fiscal Year Research-status Report
金属トロポノイド錯体を用いた触媒的分子変換反応の開発
Project/Area Number |
19K15564
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
兒玉 拓也 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80823989)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トロポノイド / 遷移金属錯体 / 不活性結合活性 / 金属ー配位子共同作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属触媒反応における酸化的付加などの素反応の多くは、金属の価数や結合様式の変化を伴いながら金属中心で進行する。これに対し、金属中心に加え、配位子も基質と直接相互作用しながら、基質の結合が切断される金属ー配位子協働機構と呼ばれる形式の反応が近年注目されている。 本研究では、芳香族化を駆動力とした新しい金属ー配位子協働機構型触媒の開発を目指した。配位子の候補として、七員環環状共役ケトンであるトロポンに着目した。トロポン自身はポリエンとしての性質を示す一方、プロトン化することで得られるヒドロキシトロピリウムは芳香属性を示す。前年度までの研究により、トロポン誘導体が作業仮説を実現し得る性質を有していることが明らかとなったため、本性質を金属ー配位子協働機構に利用できるのではないかと考え、種々の金属塩との錯形成反応および触媒反応の検討を行った。条件検討の結果、ベンゾトロポン誘導体を配位子とした鉄、ロジウム、およびイリジウム錯体の合成に成功した。得られた錯体に関してはX線結晶構造解析によって従来のトロポン誘導体と異なる配位様式を取ることを明らかにした。さらに触媒量のロジウム錯体存在下、ベンジルアルコールとアニリンとの水素移動反応が進行し、配位子のわずかな違いが反応効率に大きな影響を与えることが明らかとなった。一方、ニッケル試薬との反応では、予期せぬトロポン骨格の結合切断反応が進行することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ベンゾトロポン誘導体を配位子とした鉄、ロジウム、およびイリジウム錯体の合成に成功した。得られた錯体に関してはX線結晶構造解析によって従来のトロポン誘導体と異なる配位様式を取ることを明らかにした。さらに触媒量のロジウム錯体存在下、ベンジルアルコールとアニリンとの水素移動反応が進行し、配位子のわずかな違いが反応効率に大きな影響を与えることが明らかとなった。上記の結果は学会および論文として報告した。さらにニッケル試薬との反応で見つかった予期せぬ不活性結合切断反応に関しては、中間体の単離に成功していおりさらなる展開が期待できる。上記を踏まえ当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
触媒活性の向上を目的に新規トロポノイド配位子を設計・合成する。合成した配位子を用いて錯体を合成し、触媒反応へと展開する。ニッケル錯体を用いた不活性結合切断反応に関しては、条件の最適化および計算化学的手法による機構解明に取り組む。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、参加を予定していた日本化学会第101春季年会がオンライン開催となり、当初計画していた旅費が必要なくなった。また、感染リスク削減のため、年度末に計画していた実験の延期を余儀なくされた。上記の理由により次年度使用額が生じた。次年度は本研究提案に係る研究員(大学院生)が使用する実験装置及び反応装置が必要である。研究実施のために、配位子や反応基質・触媒合成のための有機試薬、無機試薬及び実験用のガラス器具類が必要である。研究計画の迅速な実施のため、試薬類・実験器具の拡充と反応装置の補充が必須であり、研究経費の大半は物品費消耗品費として使用する。また、一部を研究成果発表に係る旅費として使用する。
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Research Products
(4 results)