2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K15571
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小椋 章弘 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (70707843)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 赤色LED / 有機合成化学 / ラジカル / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、可視光を駆動力とした光酸化還元触媒反応が多数報告されているが、人体への影響が懸念される青色光や重金属を用いる環境調和性の低いものが多い。一方、赤色光はエネルギー変換効率やコストには優れるが、エネルギーの低さから合成科学的には見過ごされてきた。そこで本研究においては赤色光を用いた有機化学反応の開発を行っている。 Bartonエステルとして知られるチオキソピリジニルエステルに対し、水素源としてt-ドデカンチオールを用い、光触媒としてテトラフェニルポルフィリン亜鉛錯体存在下赤色光の照射を行うことによって、Barton脱炭酸反応が円滑に進行することを確認した。反応は種々のカルボン酸由来のチオキソピリジニルエステルで進行し、良好な収率で脱炭酸体を得ることに成功した。蛍光スペクトルや量子収率の算出より、本反応はテトラフェニルポルフィリン亜鉛錯体と基質の相互作用によりラジカルが発生し、連鎖機構によって進行されるものと判断された。 また、さらなる本反応条件の適用として、脱炭酸的に種々の官能基を導入することを試みた。検討の結果、現在までに、ニトロソ二量体やヒドラジンへの変換や、酸素官能基、硫黄官能基を高収率にて導入することに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はコロナウィルス感染症拡大の影響で、当初の予定よりは若干遅れたものの、基質一般性や様々な官能基化の条件の探索において重要な知見を得ることができた。本年度の研究は、概ね研究実施計画の通りに順調に進行したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点までに、本反応条件は紫外線で除去される官能基存在下でも問題なく適用可能であるという予備的知見を得ている。今後は、波長選択的な反応の実現を目指して適する基質の探索を行っていく。また、赤色光による活性化の進行機構を明らかにする予定である。
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Research Products
(9 results)