2019 Fiscal Year Research-status Report
配位子による反応空間制御を鍵とする触媒的脱芳香族的官能基化反応の開発と応用
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19K15573
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
武藤 慶 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (60778166)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脱芳香族化 / シアノヒドリン / 芳香族 / パラジウム / 配位子 |
Outline of Annual Research Achievements |
多置換脂環式分子のモジュラー合成法の確立を志向し、ユビキタスなアレーンの脱芳香族的官能基化反応の開発を行った。脱芳香族的官能基化はいくつか既に知られるものの、その反応の効率は出発原料の芳香族の電子的性質に強く依存する。電子的な偏りの小さいベンゼノイドの効率的な手法はごく小数例しかなく、過剰量のアレーンを用いるという決定的な課題を抱える。我々は、これまでの研究においてベンジルアルコールの触媒的脱芳香族的C-C結合形成法の開発に成功した。しかし、生成物が不安定であり、本手法を多置換脂環式分子合成へと展開することが難しい状況であった。 そこで、本研究では脱芳香族的反応後の誘導化を見据え、生成物の安定性と誘導容易性を獲得すべく、芳香族シアノヒドリンの脱芳香族的官能基化の開発をした。この反応で得られる生成物はα,β不飽和ニトリル部位をもつ。本研究の申請段階で、パラジウムと一般的なトリアリールホスフィンを触媒とすると、目的とする芳香族シアノヒドリンとアリル求核剤との脱芳香族的アリル化が進行することはわかっていた。しかし、望まぬ副反応としてベンジル置換反応がかなりの割合で生じることが課題となっていた。今年度の研究により、アリールホスフィンのメタ位に嵩高い置換基を導入することで劇的な化学選択性が誘起できることがわかり、副反応を抑制できることを見いだした。生成物の誘導化も予期したとおり多岐にわたり、多置換脂環式化合物の合成法を確立できた。具体的には、炭素求核剤の共役付加やニトリルや生成物上のアルケンの還元など、様々な誘導化を実施できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時の段階では、初年度終了段階で触媒(配位子)構造と反応条件の最適化を予定していた。しかし、予定よりも研究が進行し、速やかに効果的な配位子を見出すことができ、本配位子を用いて温和な最適条件を確立できた。また、目的としていた生成物の誘導化による多置換脂環式化合物合成も実施できた。 さらに、本研究から派生し、新規脱芳香族的多環性骨格環構築法を見出すに至っている。 以上の理由から、本研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の展開として、この見いだした配位子の解明研究を展開する。詳細な配位子の置換基効果や、速度論実験などの機構解明実験を網羅的に行う。必要とあれば量子化学計算も行い、相補的に機構に関する知見を得る。これら反応機構解明研究を通じ、見いだした脱芳香族的反応のさらなる展開への基盤を固める。 この研究と同時に、本研究中に見いだした新規脱芳香族的多環性骨格構築法を推進することを計画している。
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Causes of Carryover |
当初予定していた配位子合成をするよりもはやく最適配位子を見出すにいたったため、当該年度の研究費に未使用額が生じた。令和2年度では、現在遂行している反応機構解明研究のために、重水素試薬や、NMRモニター実験のための重溶媒(重トルエン)、さらには中間体単離のためにパラジウム触媒の購入を予定している。NMR実験では禁水・禁酸素条件を要するため、グリースレスバルブ付のサンプル管が複数本必要となる。また、進展している研究において新規な触媒を見いだしつつあり、触媒合成用試薬や解析に、未使用金額分の研究遂行経費を充てる。
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Research Products
(7 results)