2021 Fiscal Year Research-status Report
異常高原子価鉄イオンを有するペロブスカイト型酸化物のイオン伝導機構の解明
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19K15585
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 真人 京都大学, 化学研究所, 助教 (10813545)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 異常原子価鉄 / カチオン秩序配列 / ペロブスカイト酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度も引き続き、異常高原子価鉄イオンを含む新規物質の探索を行った。その結果、異常高原子価Fe5+イオンを含むBサイト岩塩型ダブルペロブスカイトLn2LiFeO6(Ln: La, Nd, Sm, Eu)を発見し、これらの構造物性相関を明らかにした。精密な結晶構造解析の結果、Ln = Laはダブルペロブスカイトの中では珍しい菱面体晶の結晶構造をもつ一方で、Ln = Nd, Sm, Euはいずれも典型的な単斜晶構造をもつことが分かった。また、Ln2LiFeO6(Ln: Nd, Sm, Eu)の単斜晶歪みは、Lnのイオン半径の減少に伴い、増大することが分かった。Feの価数については、57Feメスバウアー分光測定やDFT計算結果から+5価であることが確かめられた。したがって、Ln2LiFeO6(Ln: La, Nd, Sm, Eu)は酸素に八面体されたFeの価数が+5のみで構成される初めての物質である。磁化率の温度依存性から、Ln = La, Nd, Sm, Euはいずれもワイス温度の絶対値よりも非常に低い温度で磁気相転移を示すことが判明した。一方で、磁気的基底状態はLnイオンに依存し、Ln = Sm, Euでは磁気転移温度以下で自発磁化が生じることが判明した。この結果は、Ln = Sm, Euにおける大きな単斜晶歪みによりジャロシンスキー・守屋相互作用が大きく増強されたからであると示唆される。さらに、中性子回折測定結果から、Ln = La, Ndはいずれも自発磁化が見られないものの、磁気構造は大きく異なることが判明した。詳細な磁気構造については現在解析中である。また、昨年度発見したBサイト層状ダブルペロブスカイトSr2ScFeO5.5+xについては、現在結晶構造及び磁気構造を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、新たに異常高原子価Fe5+イオンを含むBサイト岩塩型ダブルペロブスカイトLn2LiFeO6(Ln: La, Nd, Sm, Eu)を合成することができ、これらの物質の構造物性相関を解明できたことから、おおむね計画は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まずLn2LiFeO6の磁気構造解析及び、Sr2ScFeO5.5+xの結晶構造解析を行う。その後は当初の一番の目的である異常高原子価鉄イオンを含む酸化物の酸素イオンのダイナミクスの解明のために、Ln2LiFeO6とSr2ScFeO5.5+xの酸素の放出・挿入過程やイオン伝導率を調べる予定である。また、引き続きオゾン酸化や高温高圧合成により異常高原子価鉄イオンを含む新規物質の探索に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は、主に物性測定に時間を割いており、高圧合成に不可欠なPtチューブなどの消耗品をあまり購入しなかったため、次年度に一部研究費を繰り越すこととなった。次年度は、異常高原子価鉄イオンを含む新規物質の探索に取り組むため、高圧合成用の消耗品購入のために研究費の多くを用いる予定である。
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Research Products
(11 results)