2020 Fiscal Year Research-status Report
Enhancement of Catalytic Activity of Dinuclear Metal Complex Catalyst Based on Optimization of Total Charge
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19K15587
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森本 祐麻 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20719025)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 二核錯体 / 自己集積挙動 / 酸化反応 / 高原子価化学種 / 過酸化水素 / 電子スピン共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高い酸化活性を有する、二核ニッケル(III)ジ(ミュー-オキシド)錯体の生成、および芳香族化合物などの有機物との反応挙動について、電荷を有する配位子が与える効果についての影響を明らかにすることである。 本研究の申請段階で構想した、スルホン酸基をテザード配位子とする、キノリルアルキルアミン4座配位子の合成は完了した。さらにそのニッケル二価錯体の合成は行うことができた。この錯体の溶液挙動は、先行研究でその溶液挙動が研究されてきた比較対象となる錯体のものと大きく異なり、極めて過酸化水素に対して高い反応性を有することがわかった。しかしその反応性のために、活性中間体を観測することができなかった。活性中間種を観測するための、観測条件は引き続き探索を進めるとともに、この錯体の触媒活性についての検討も行う。 また、代替的なアプローチとして、活性中間体を観測することが可能なことがわかっている系に、外部からカルボン酸アニオンなどの配位子を加えることで、アニオン配位子を持つ二核ニッケル(III)ジ(ミュー-オキシド)錯体の調製を試みた。アセテートを始めとするアニオン種を、二核ニッケル(III)ジ(ミュー-オキシド錯体の溶液に添加することによって、定量的に目的とする化合物が生成することが明らかになった。この錯体は、紫外可視吸収スペクトルおよび電子スピン共鳴スペクトルによって、そのキャラクタリゼーションを行った。詳細はまだ明らかになっていないが、2つのニッケル中心の酸化状態は保ったまま、それらの電子状態と、二核間の相互作用の大きさが変化していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タウリンを原料としてスルホン酸基を有するキノリルアルキルアミン配位子を合成し、その生成は1H NMRおよび質量分析によって確認した。合成した配位子をニッケル(II)過塩素酸アニオンと塩基性条件下で反応させることにより、目的とする化合物を得た。この化合物は、水やメタノールなどのプロトン性溶媒に対しては比較的良好な溶解性を示した一方で、アセトンやアセトニトリル、ジメチルホルムアミド等の極性非プロトン性溶媒に対しては溶解しなかった。塩酸などのブレンステッド酸を滴下することにより、その溶解性については大きく向上することがわかった。これは、電荷中和によって錯体の会合を促進するという作業仮説を示唆する結果である。一方で、錯体の反応性検討を進めるには適切な条件を検索する必要性がある。この錯体に過酸化水素を加えたところ気泡が激しく発生したことから、この錯体は過酸化水素を効率的に活性化する能力を持つことが示唆された。 一方で、昨年度までの研究代表者の研究で、二核構造を有する酸化活性種を生成することがわかっている系に対して、外部からアニオン配位子を加えるアプローチで、アニオン配位子の効果について検討を行った。キノリルアルキルアミン三座配位子を有する2核ニッケル(II)-ジ(ミュー-ヒドロキシド)錯体のアセトン溶液を冷却し、錯体に対して当モル量の過酸化水素を加え、対応する2核ニッケル(III)-ジ(ミュー-オキシド)錯体を生成させた。その後、錯体に対して二当量の安息香酸アニオンを加えたところ、電子遷移スペクトルが速やかに変化した。この錯体の電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、錯体の酸化数は変化していないものの、金属中心上の電子スピン間の相互作用が変化していることを示唆するスペクトルが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に合成したスルホン酸基を有するニッケル錯体について、過酸化水素を酸化剤とする芳香族化合物の水酸化反応における触媒活性を評価する。具体的には、反応溶媒、ブレンステッド酸および塩基が触媒活性に与える影響について評価し、既報の中性配位子を有するニッケル錯体の触媒活性との比較を行う。また、配位子のアミン部位とスルホン酸基の間のリンカー構造が異なるものについても合成を検討する。 一方で、2核ニッケル(III)-ジ(ミュー-オキシド)錯体にカルボン酸アニオンを加えることによって生成する、新規な錯体種についてもより詳細な検討を行う予定である。具体的には、加えるカルボン酸アニオンの電子供与性および立体的な嵩高さを変化させ、金属中心とアニオンの相互作用について系統的な解釈を与えることを目的とした実験を行う。この錯体の反応性についての検討を行うことにより、二核錯体の電子状態と反応性の相関について詳細な考察を進める。
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Causes of Carryover |
本年度は、コロナの影響もあり、学会に参加するために計上した旅費を執行する機会がなかった。そのため、劣化した実験器具の保全などに予算を充当した。
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