2022 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン-電子連動現象の探索を目指した、カゴメ型多孔性電子伝導体の創製
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19K15590
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
林 幹大 長崎大学, 教育学部, 助教 (40771225)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プロトン移動 / 超分子シート / エネルギー移動 / 光安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は,ビスピラジンジチオレンニッケル錯体(Ni錯体)とカリックス[4]レゾルシンアレーン(CR)との共結晶(Niシート)の調査を行った。Niシートは錯体とCRをプロトンアクセプター・ドナーとする水素結合ネットワークを持つ層状物質であり、CRから錯体へプロトン移動した状態となる。Pd錯体とCRの共結晶(Pdシート)でも結晶構造はNiシートと同形であり、プロトンが錯体側へ移動することを確かめた。共晶化に伴うプロトン移動は錯体とCRの光機能に影響し、特にNiシートでは錯体・CRの光吸収・発光エネルギーの近接が示唆された。興味深い性質として、Niシートの光安定性を見出した。具体的には、CRは白色光下で酸化的分解を受けるが、Niシート内のCRは光に対して安定であり、Pdシート内のCRは光分解された。この原因として、CRの光酸化過程よりも迅速な励起状態のCRから基底状態のNi錯体への共鳴エネルギー移動の寄与が考えられる。この水素結合を介したNi-CR間の共鳴ではシート構造に由来する立体的要因とプロトン移動に伴う電子状態変化が大きな役割を果たすため、Niシートはプロトンとエネルギーの協同移動を示す物質候補である。得られた成果は学術論文にまとめ,投稿の準備をしている。 本研究はプロトン―電子協同移動を示す分子集合体の創製を目指した。構成要素と目したNi錯体は、PdやPtへの金属置換によりプロトン脱着に伴う電子状態変化の制御が可能である事を報告した。しかしNi錯体の酸化的集積体に対し、トポケミカル的合成や分子修飾によるプロトン-電子連動機能の導入が叶わず、当初の目的は達成できなかった。他方、Ni錯体とCRの共晶化で新規層状物質のNiシートを見出し、その光安定性を明らかとした。金属置換した同系物質との比較から、Niシートがプロトンとエネルギーの協同移動をもたらす物質候補であることを示した。
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Research Products
(3 results)