2019 Fiscal Year Research-status Report
キノリン骨格PNN鉄錯体によるC-Hボリル化反応の開発
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19K15592
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
神谷 昌宏 北里大学, 理学部, 助教 (40758447)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | C-H官能基化 / 鉄錯体 / 触媒 / 有機ホウ素化合物 / ホウ素化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、鉄錯体を利用した芳香族炭化水素化合物のC-Hホウ素化反応の開発に取り組んだ。研究の初期段階において、上記の鉄錯体から生じる活性種が特定のC-H結合(sp2炭素-水素)にのみ特異的に活性を示すことを見出した。この知見をもとに、高沸点かつsp2炭素を含まない化合物(シクロペンチルメチルエーテル、オクタン)を溶媒として使用したところ、目的物であるベンゼンのホウ素化反応が選択的に進行した。申請時の段階で課題となっていた溶媒のC-H結合活性化による副生成物の発生を抑制したことで、原料である炭化水素化合物を溶媒として過剰に使用する必要がなくなり、原料転換率が劇的に向上した。また、同様の理由により、固体の基質(ナフタレン等)にも反応の適用が可能となった。鉄錯体から触媒活性種が発生する過程については、錯体と反応開始剤との化学量論反応から生じる化学種を単離および重溶媒中で追跡することにより調査した。この調査の結果、研究初期に使用していた空気に敏感で取り扱いの難しいヒドリド化剤(ナトリウムトリエチルボロヒドリド)のかわりに、汎用されている塩基(カリウム-tert-ブトキシド等)を用いても同様の触媒活性種を発生することが明らかとなった。 本反応は鉄錯体を用いてシクロペンチルメチルエーテルのような有機溶媒中で、単純な芳香族炭化水素化合物(ベンゼン等)を選択的にホウ素化した初の例である。これらの成果については、学会および学術論文を通じて公表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度計画に基づき、各種分析により触媒反応の活性種、中間体および反応機構に関する調査と、ホウ素化が進行しにくい溶媒の選定、反応条件の精査、配位子の再設計により、目的反応の選択的な実現に取り組んだ。前述の検討により、課題となっていた溶媒のC-Hホウ素化等の副反応を抑制し、多様な基質のC-H結合ホウ素化が可能な触媒系を見出した。そのため、次年度に予定していたアルカンなどの飽和炭化水素化合物のホウ素化にも既に着手している。また、反応機構については、中間体に関する分析結果をもとに、計算化学による推定も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に予定していた飽和炭化水素化合物(アルカン)の活性化に向けて、引き続き反応条件の精査を行う。また、一部の芳香族化合物(クロロベンゼンなどのハロゲン化物)については、炭素-ハロゲン結合の切断が競合し、副生成物が生じることが明らかになっている。これらの基質を用いた反応についても副生成物低減に向けた調査を行う。
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Research Products
(15 results)