2019 Fiscal Year Research-status Report
顕微分光法による氷/凍結濃縮溶液界面の物性計測と界面揺らぎのダイナミクス解明
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19K15599
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
稲川 有徳 宇都宮大学, 工学部, 助教 (30828489)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 凍結濃縮溶液 / 氷 / 界面揺らぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は氷と凍結濃縮溶液(FCS)が成す界面の揺らぎを計測するための手法の確立を主な目的とした。まず、微小空間における吸収スペクトルの取得をするために、デジタル顕微画像の解析による吸収スペクトルを再現する手法を報告した。まず、主成分分析により再現したいスペクトルの構成要素を算出した。そして、画像のRGB値からそれぞれの重み係数を算出し、その割合で要素スペクトルを重ね合わせることでスペクトルを再現する。手法の確立を行ったと同時に、FCS内のpH計測への応用も示し、FCSの物理化学的性質を計測するためのツールとしての有用性も示した。 また、FCSをマイクロ流体デバイスとして用いることで、氷と不凍タンパク質の間に働く化学的相互作用を定量的に計測する手法の原理を開発し報告した。マイクロメートルサイズのポリスチレン粒子に不凍タンパク質を修飾し、FCSチャネル内で電気泳動させる。表面の不凍タンパク質と氷の間に化学的相互作用が働けば、粒子は泳動することができない。しかし、印加電圧を大きくして泳動力が相互作用力よりも大きくなった時、粒子は泳動し始める。この時、泳動力は相互作用による抵抗力と同じ大きさになっていると考えられるため、この時の泳動力を「不凍タンパク質の相互作用力」として評価した。粒子に働く力はおよそ数百pNであり、報告した手法が小さい力を計測するプラットフォームとしても有用であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
氷に囲まれたFCSを計測するための新たな顕微分光法の構築に成功したことから、FCS内の物性を計測するためのツールを得ることができた。また、フォノンスペクトロスコピーの予備実験をスタートした。
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Strategy for Future Research Activity |
単一光束フォノン共鳴スペクトロスコピーの開発とそれを用いたマイクロサイズのFCSと氷が形成する界面の揺らぎの定量的計測。 また、RGBを用いた吸収スペクトルの再現手法を用いて、FCS内のpHのマッピングを行い、界面揺らぎがFCSの化学的性質に与える影響を解明する。
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