2019 Fiscal Year Research-status Report
有機薄膜デバイスのオペランド解析を可能にする反射型多角入射分解分光法の開発
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19K15602
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塩谷 暢貴 京都大学, 化学研究所, 助教 (60822963)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | MAIRS2 / pMAIRS / 赤外分光法 / 薄膜 / 水蒸気 / 干渉縞 / 二重変調 / 多重反射 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,本課題の開発目標である“反射型”多角入射分解分光法(MAIRS)の基礎原理になるMAIRS2の開発に取り組んだ.従来のMAIRSは,複数の“入射角”で測定した一連の透過スペクトルを,回帰式計算によりIP(面内)およびOP(面外)スペクトルに分解する解析法であるが,低入射角測定を行うことに由来する水蒸気や干渉縞といったノイズがスペクトルに現れ,解析を妨げるという問題があった.加えて,入射角ごとに光軸調整を必要とする反射法に応用する手法として,入射角可変測定を必要とする従来のMAIRSは現実的ではなかった.そこで,低入射角を避けて,入射角の代わりに“偏光角”を変化させる新たなMAIRS(MAIRS2)を考案した.この手法は,試料を一定の入射角に固定した状態で測定できるため,上で示した全ての問題を克服し得る. 本研究では,1) MAIRS2の計測理論を従来のMAIRS理論を基にして再構築し,2) 正しい測定結果を得るために必要な測定条件の最適化を理論および実験の両面から行った.この手法を,実用的な機能性材料であるフルオロアクリレートポリマーやテトラフェニルポルフィリンの薄膜に応用することで,ほとんどノイズフリーな測定が行えることを実証した.これにより,ノイズをサンプル由来のピークと明確に識別できるようになり,微弱なピークでさえ議論できるようになった.また,水蒸気や干渉縞の問題は,MAIRSに関してだけではく,透過法やATR法など,すべての赤外分光法に共通した積年の課題で,MAIRS2を用いることでこの基本的な課題を同時に解決できた点も重要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたMAIRS2の開発をほぼ達成できたため.
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Strategy for Future Research Activity |
MAIRS2は原理的には完成しているが,偏光子に由来する測定上の問題が残っている.これを克服するとともに,MAIRS2を反射法へ適用することで,反射型MAIRSの開発を目指す.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により,参加を予定していた複数の学会が中止になったため.本年度も引き続き,同様の影響が見込まれる.それにより,相対的に研究室内での業務(論文執筆や実験業務)が多くなることが予想される.繰越分は,それに伴う消耗品費や論文掲載費などに割り当てる予定である.
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Research Products
(40 results)