2021 Fiscal Year Research-status Report
有機薄膜デバイスのオペランド解析を可能にする反射型多角入射分解分光法の開発
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19K15602
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塩谷 暢貴 京都大学, 化学研究所, 助教 (60822963)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 反射吸収法 / MAIRS / 赤外分光法 / 薄膜 / 表面反応 / 有機半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに,薄膜中での化学種の定量を可能にする,MAIRSを用いた新たな解析機構を構築することで,この手法自体の応用の幅を拡げることができた.本年度は,このようにして構築した解析手法を,様々な機能性有機材料に応用することで,この手法がもつ潜在的価値を高めることを目指した.具体的には,高性能半導体材料であるジナフトチエノチオフェン(DNTT)前駆体の構造転換反応に応用することで,これまで未整理であった有機半導体前駆体の表面反応機構を理解するための道筋を確立した.特に,前駆体の分子凝集構造が化学反応の進行を決める鍵となることを,MAIRSの測定データから明瞭に示すことができた.得られた知見は,有機エレクトロニクスだけでなく,表面反応に関わる材料化学や有機合成,超分子化学などの研究分野に広く影響を及ぼす.解析手法の観点からみれば,MAIRSが様々な研究分野に発展できることを示したともいえる.実際,ポルフィリン誘導体によって形成される超分子構造の解析にMAIRSを応用した別の研究では,分子配向のみならず,膜厚や結晶構造,分子間相互作用など様々な構造情報を引き出すことができ,このような超分子材料の解析にも高い適性があることを実証している. さらに,本課題の目標である反射型MAIRSの開発にも取り組んだ結果,この新手法の計測理論を確立した.実際に,電磁気学に基づいた理論計算により薄膜のIP(面内)およびOP(面外)スペクトルが正しく得られることを証明した.さらに,分子配向解析の定量性確保のために必須となる,基板に固有の補正係数も計算によって求めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた反射型MAIRSの完成にまでは至らなかったものの,理論的基盤は構築することができた.加えて,当初は想定していなかったMAIRSを用いた新しい解析の枠組みを構築できた.したがって,全体としてみれば想定通りの成果を挙げているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
反射型MAIRSを種々の有機薄膜材料に応用し,様々な測定条件を検討することで,この手法の完成を目指す.
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響により当初参加を予定していた学会がオンラインで開催されたため,旅費を必要としなかった.また,当初想定していなかった,MAIRSを用いた新たな使い方を考案したことにより,その実証実験に時間を割いたため.この解析手法は,本課題の開発目標である反射型MAIRSにも共通して使うことができ,本手法の価値を高めるものである.したがって,繰越分は当初の計画通り,反射型MAIRSの開発実験に伴う消耗品費や,得られた成果を国際的学術誌に発表するための論文掲載費などに割り当てる予定である.
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Research Products
(26 results)