2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K15610
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
西垣 潤一 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 特任准教授 (60646496)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 補酵素再生 / 金クラスター触媒 / 脱水素酵素 / 酸化還元反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
担持金クラスターおよび金ナノ粒子は、O2を酸化剤として温和な条件下で、補酵素β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)をNAD+に酸化し、その活性は金粒子のサイズと担体の酸性度に依存することを明らかにした。この反応をグルコース脱水素酵素によるグルコース酸化反応に適用することで実際の酵素反応における補酵素再生系として機能することを確かめた。 一方、脱水素酵素による還元反応の補酵素再生に利用するNAD+の水素化は、強塩基性の担体に3 nm以下の金クラスターを固定することで達成した。水素化時にH2はH+とH-に非等方的に活性化され、H-がNAD+の水素化に用いられることをpH6ー9における水素化活性の追跡や触媒中のAuの電荷から明らかにした。合成した触媒の中で活性の高かった酸化セリウム担持金クラスター(Au/CeO2)を用いて再活性化した補酵素NADH(NAD+の水素化反応の生成物)は、アルコール脱水素酵素および乳酸脱水素酵素に添加することでアルデヒドおよびピルビン酸の水素化反応が進行することを確かめた。しかし、金クラスター触媒によるNAD+水素化反応が酵素反応に比べ遅いため、酵素反応系中に直接金クラスター触媒およびNAD+を加えても酵素反応生成物の生成が確認できず、実際に補酵素再生系として用いるには不十分であった。 今後はこの反応速度の差を解消を検討する。金クラスター触媒と酵素がともに高活性で機能する条件を発見することで、金触媒と脱水素酵素を組み合わせた新たな酵素-人工ハイブリッド系による有機合成法を開発できる
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
酵素酸化反応における補酵素再生系の構築に関しては順調に進行している金クラスター触媒を補酵素再生系とするグルコース脱水素酵素のモデル反応では、脱水素酵素によるグルコース酸化反応の収率はAuクラスター触媒の触媒回転数(TON)に比例することが明らかとなった。Auクラスター触媒の活性のさらなる向上の研究は継続するが、Auクラスターによる補酵素の再生反応および酵素自体の反応はその活性がpHに左右されるため金触媒、酵素両方の活性の高い条件のスクリーニングが必要となる。これについては、酵素自体の活性や安定性の向上に関するテクニックについての知識が不十分さが問題となるため、外部の研究組織との連携も模索する。 一方、酵素還元反応における補酵素再生系の構築に関してはやや進行が遅れている。再生反応の要である金クラスター触媒によるNAD+の水素化反応は塩基性の金属酸化物担体にサイズの小さな金クラスターを担持することで達成できたが、酵素反応に比べて金クラスター触媒によるNAD+水素化の反応速度が低いことが問題となっている。現在、より高い塩基性の担体により微小化した金粒子を固定する処方の開発を検討している。また、反応温度を高くすることで反応速度の向上が期待できるが、酵素自体の熱安定性が問題となっている。 別の解決法として、高い水素化活性を持つことが知られている白金を金クラスターに添加する手法の検討を開始している。白金粒子を用いると補酵素であるNAD+の水素化に加えて基質であるアルデヒド、ケトンの水素化も進行してしまい、酵素を用いる利点である高選択性が失われてしまうため、AuPt合金クラスターとして反応性を制御し、選択的にNADHを水素化する条件をスクリーニングする。
|
Strategy for Future Research Activity |
有機合成反応へ酵素反応を利用する場合、光学活性アルコールの生成などの還元(選択的水素化)反応を行う反応の需要がより高いため、やや進行の遅れているNAD+水素化触媒の活性向上を重点的に進める。 これまでの高い塩基性を持つ金属酸化物により小さな金クラスターを固定する手法に加えてAuPtクラスター触媒の検討を行う。純粋な白金クラスターは、補酵素のNADHだけでなく、酵素基質であるアルデヒド等を直接水素化してしまい酵素の高い選択性が利用できなくなる。そこで、金と白金の比率を変えた合金クラスターを調製し水素化反応の活性を評価する。合金化することで、表面に存在する電気陰性度の低いPtから高いAuへの電子移動が起こり水素化活性の制御が可能になると考えられる。また、表面に存在するPt原子の密度が低下することにより過剰な水素化が抑制され、NADH水素化における1,4-選択制の向上も期待される。 これに加えて調製した金クラスターと脱水素酵素が同時に高活性で機能する反応条件(基質・補酵素濃度、pH)のスクリーニングを行い、酵素-金クラスターハイブリッド触媒系として機能させる。同時に、脱水素酵素自体をシリカ表面に固定し温度安定性を向上させ、高温条件において金クラスター触媒-脱水素酵素ハイブリッド系を利用する反応の検討する。 酸化反応については、NADH酸化反応の活性向上が反応全体の収量の増加に直結するため、より活性の高い金触媒の調製を引き続き検討する。研究が順調に進行した場合には、金クラスター触媒と酵素をまとめて固定し、1つの固体触媒として扱うことができるような手法の検討を行う
|
Research Products
(2 results)