2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K15611
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
三原 義広 北海道科学大学, 薬学部, 講師 (90733949)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 吸着剤 / 水質浄化技術 / 汚染物質吸着ゲル / ナノ材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物の発酵が続く限り水中を自律浮沈するゲル粒子を開発した。この技術を応用し、自律浮沈ゲルをエネルギー源(エネルギー層)に用い、その周りに有害物質を吸着する(機能層)を設けることにより、水浄化の機能を有した自律浮沈ゲルができる。しかし、2021年度までの浮沈ゲル粒子は製造直後にドライイーストの発酵が始まるため、生の状態で長時間保存することができなかった。また、製造された粒子を凍結乾燥しても浮沈機能の低下がみられ、保存性に問題があった。そこで、2022年度は粒子製造方法を大幅に見直し、打錠で成形したドライイーストとグルコースを含む成形物をアルギン酸と一緒に電動分注機で吸い上げたのち、カルシウム液に滴下してコアシェル型の浮沈粒子を製造したところ、浮沈粒子製造時にドライイーストが濡れることなく、凍結乾燥することが可能となり、浮沈回数も大幅に増加した。ドライコア部表面にはドライイーストとグルコースの他、飽和脂肪酸塩を添加することで製造時に有効成分が濡れにくくなり、かつ浮沈活性時もコアとシェル部の境界面を保持するバリア層として機能することがわかった。また、粒子の製造方法も、打錠機や分注機を導入することで、手作業による製造バラツキから解放され、ほぼ均一な性能を有する浮沈粒子を得ることができた。汚染物質の除去実験では、各用途に要求される吸着剤を浮沈粒子およびその外側領域に付与したコアシェル型の多層粒子を作製し、セシウムイオンおよびフッ化物イオンなどイオン性物質の浄化能力を確認した。浮沈する粒子を撮影して、粒子の移動速度や滞留時間等を自動計測したところ、浮沈が繰り返されることでセシウムイオンの除去効率が向上することを確認した。水性媒体内における移動距離がより増大し、浄化効率が向上すると考えられる。以上の成果の一部は図書1件、発表1件(特許範囲外)としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度までの課題であった多層(コアシェル)粒子の製造方法は確立されたほか、コア部のドライ化を進めた結果、粒子の浮沈回数が大幅に増加した。粒子の構成および製造方法について、新規性の高い部分においては現在特許出願を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、浮沈ゲルの実際の吸着剤を導入した際の吸着性能の確認のほか、サンプル提供のための乾燥保存性試験を実施する。また、さらなる浮沈粒子性能の向上のため、自律浮沈粒子の実行温度範囲の拡大のための酵母の見直しと粒子製造歩留の改善、および吸着機能成分の付与した水浄化浮沈粒子のサンプルを製造する。実環境における材料の投与と回収の両方に配慮した汚染物質の吸着、回収機能を有する浮沈水質浄化粒子の製造を行う。アルギン酸に活性炭や水酸化セリウムを内包し、これを外層部として構築し、色素やフッ素の吸着速度を検証する。さらに、アルギン酸層内での吸着剤(固体物質)の粒度や分散性の変化によって、汚染物質の吸着容量や速度が変化するものは、吸着剤の粉砕方法も検討する。浮沈挙動性能を損なうことなく、常温で1年以上保管できる浮沈ゲル粒子の製造工程を完成させ、自律浮沈する水浄化粒子の完成を目指す。
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Causes of Carryover |
特許出願を控えており、学会発表のための出張が減少している。次年度は学外での試験製造研究が増える見込みである。
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