2020 Fiscal Year Research-status Report
相分離型イオン液体触媒を用いたスマート反応・分離プロセスの開発
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19K15613
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
河野 雄樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (00772964)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イオン液体触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度開発した一連のイオン液体触媒の中で、副生する水共存下でも脱水縮合反応を進め、反応後の生成物相への触媒残留を抑制することができた、Zwitterion/酸混合型のイオン液体触媒を用い、種々のアルコールとカルボン酸からの脱水縮合反応を行った。反応原料の構造が反応転化率に与える影響を評価した結果、低級アルコールと高級脂肪酸等、混ざり合わず相分離する反応原料を温和な条件で反応できるいくつかのイオン液体触媒を見出した。本反応は原料の相互溶解度が極めて低いため、通常、高温条件や多量の共溶媒の添加によって溶解度を向上させて反応を行う必要がある。一方、本研究で開発したイオン液体触媒を用いた場合、100℃以下の温和な条件でも効率良く反応を進めることができ、プロセスの大幅な省エネ化につながると期待される。 上記脱水縮合反応を温和な条件で進行できた因子を明らかにすべく、高転化率が認められたイオン液体触媒と、反応原料との相分離状態を確認した。2種の反応原料とイオン液体触媒を混合し、激しく攪拌して静置し、相分離状態を目視にて観察したところ、液/液相分離した反応原料の中間に、イオン液体触媒が第三相として相分離する様子が見られた。このイオン液体触媒相をNMR測定により解析したところ、イオン液体触媒相に各反応原料の双方が溶解していることが明らかとなった。本結果は、イオン液体触媒が触媒かつ溶媒として機能し、触媒相における反応原料の相互溶解度が向上したことにより、温和な条件でも反応が進行したことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、開発したイオン液体触媒を用いて反応原料の異なる種々の脱水縮合反応を行い、原料が均一混合する反応系に加え、原料が相分離する反応系へと展開した。その結果、イオン液体触媒の構造によっては、原料が相分離する場合であっても100℃以下の温和な条件で反応を進行可能であることを明らかとした。当初予期していなかった本成果は、これまでエネルギー多消費であった化学反応プロセスを大幅に省エネ化できる可能性を秘めており、大きな進展と言える。一方、研究成果の発表が遅れているため、最終年度である次年度で加速させたいと考えている。研究全体の進捗としては、おおむね順調と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で得られた成果を基に、混ざらない反応原料からの脱水縮合反応を温和な条件で進めることが可能なイオン液体触媒の因子を明らかにする。イオン液体触媒の構造が原料・生成物の溶解性や水吸収・放出機能に与える影響を整理する。また、触媒のリサイクル性能を評価し、後段の触媒分離プロセスも容易な反応・分離プロセスの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は、イオン液体触媒の合成及び脱水縮合反応の評価に用いる試薬等の消耗品の購入を行った。一方、国際学会等への参加を見合わせたため、次年度使用額が生じた。最終年度である次年度の助成金の使用計画としては、イオン液体触媒の開発を加速すべく、有機合成用の試薬やガラス器具等の消耗品に加えて、各種反応原料を用いた脱水縮合反応の評価に必要なHPLC、GC等の備品・消耗品購入に使用する。
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