2020 Fiscal Year Research-status Report
電力と基幹化合物の同時生産が可能なフロー型バイオマス処理システムの開発
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19K15615
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
中川 朋恵 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部3Dものづくりセクター, 副主任研究員 (30560172)
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Project Period (FY) |
2020-02-01 – 2022-03-31
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Keywords | バイオ燃料電池 / バイオリアクター / バイオリファイナリー / 同時生産 / PQQ-GDH / ガラクタル酸 / フローシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
バイオマスから電気エネルギーと基幹化合物を同時に生産可能なバイオ燃料電池の実現を目指して研究を進めている。このシステムにより、バイオマス処理、エネルギー生産、有用物質生産を同時に行うことが期待できる。ピロロキノリンキノン依存型グルコース脱水素酵素(PQQ-GDH)が、食品加工残渣に含まれるD-ガラクツロン酸を酸化してガラクタル酸に変換可能であることが既に分かっており、ここで生成するガラクタル酸は架橋剤の材料等に利用できる有用物質である。この酵素反応を電極反応に用いることで、有用物質のリアクターとしての役割も併せ持つ電池を構築する。同時生産システムを実現するためには生成物の継続的な生産と単離が求められる。原料溶液内に電極を浸漬させただけでも出力と生成物は得られるが、原料濃度の低下や生成物阻害などにより反応効率が次第に低下していくことが問題となる。 本研究では、セル全体のフロー化によりこの問題の解決に取り組んでいる。まず、フローセルを構築し、溶液の流れがある条件下で電池として機能することを確認した。さらに、実際に電池を稼働させるときと同様に外部抵抗を入れて放電させ、電流値と生成物量の両面から同時生産挙動を評価した。その結果、流出液を再びセル内に戻して循環させた場合に、24時間経過時点で静置の場合の約3倍の電気量が得られ、流れがあるという環境が反応に良い効果を及ぼすことが示唆された。その一方で、フローでは電極からの酵素の脱離が起きやすい等の課題がある。明らかになった課題の解決と、フローが同時生産に及ぼす効果の解明を引き続き進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、初年度においてフローセルの構築と同時生産の確認と評価を行った。まず、溶液の流れの有無で、電流と生成物の生産挙動に差が現れており、フローシステムが及ぼす良い効果も見えてきた。次に、フローにおける課題が分かり、取り組むべき改良点(具体的には、電極への酵素の固定化とカソードへの酸素の供給方法)を明確化することができた。 上記のように、フローによる効果を明らかにすること、実用化に向けたフローシステムを構築することの2点において見通しが立ってきたため、順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
明らかになった課題のうち、電極への酵素の固定化を最優先課題として取り組む。0.1mL/min.程度の流速で反応溶液を流しても静置状態と同等程度に酵素の流出を抑えられる固定化方法を見出す。 次にこの固定化を施した電極を用いて、再びフロー条件下、静置条件下での放電実験を行う。両条件における電流値の挙動、生成物量を比較し、フローが同時生産に及ぼす効果の解明とセルの改良を進める。
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Causes of Carryover |
電気化学アナライザーを購入したが、220万円で購入することができたため、10万円の残額が発生した。次年度酵素の購入に使用する。
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