2019 Fiscal Year Research-status Report
塩によりπ電子系の変調が可能なFLP導入ポリマーの創製
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19K15616
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山門 陵平 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 助教 (90735549)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | π共役系ポリマー / フラストレイテッドルイスペア / 会合体 / イオンペア |
Outline of Annual Research Achievements |
目的に応じて、容易に特性を変調させることができるπ電子系があれば、開発・製造過程における効率化・省エネルギー化を可能にする。そこで本研究課題では、ゲスト添加というシンプルな手法によって自在に電子密度を変調可能なπ電子系ポリマーの合成を第一の目的として、以下の研究を行なった。 嵩高い置換基を有するルイス酸およびルイス塩基は立体障害によりお互いに錯形成を行うことができないが(Frustrated Lewis Pair)、小さいアニオンおよびカチオンとはそれぞれ会合体を形成することが多核NMR測定より確認されている。そこで、まずはπ共役骨格に嵩高い置換基を有するルイス酸(ジメシチルボラン)およびルイス塩基(ジフェニルアミンまたはジフェニルホスフィン)を導入した新規D-π-A分子を合成し、様々なイオンペアの添加による、ルイス酸-アニオンおよびルイス塩基-カチオンの会合体形成を利用したπ電子系の電子密度の変調および集合形態の制御を試みた。アニオンとの会合能について、UV-vis吸収スペクトルを用いて評価を行ったところ、フッ化物イオン、シアン化物イオンなどのイオン種を添加した際にスペクトルの変化が見られたことから、会合体の形成を確認した。一方、カチオンとの会合能について精査したとこと、ルイス塩基としてジフェニルホスフィンを導入した誘導体にいて、銅カチオンなどとの相互作用が確認された。さらにこの誘導体が、銅カチオンおよびフッ化物アニオンに対する両会合特性を示すことを見出した。得られた会合体の吸収スペクトルの結果は、理論計算とも一致している。 また、並行して進めているFrustrated Lewis Pairを導入したπ電子系ポリマーの合成にも成功し、今後光学特性および会合能の評価を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル化合物の合成に成功し、光学特性評価および多核NMR測定を用いて様々なイオンペア添加によるπ電子系の変調に関する知見を得ることができた。また、計画していたFLPを導入したポリマーの合成にも成功し、各種光学特性を評価した。ほとんど当初の予定通り研究が進んでおり、ゲスト分子によるπ電子系の変調に関する重要な知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在合成に成功しているモデル化合物およびポリマーは、想定していたより選択可能な溶媒の種類の幅が狭かったことから、様々な溶媒を用いることができるような分子設計および、固体中での測定を進めている。さらに、得られてモデル化合物およびポリマーは結晶性が低く、アモルファスであることがわかっているが、より詳細な集合形態についても調査していく。
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Causes of Carryover |
SPring-8で予定していた測定の一部を2019年度には実施しなかったため、また一部参加予定だった学会が中止になったため、旅費を使用しなかった。また、装置についても一部は別予算で購入したものを使用可能だったため、購入しなかった。 多核NMRの測定が今後さらに必要であることから、高価な重溶媒代などとして、使用する予定である。
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Research Products
(3 results)