2019 Fiscal Year Research-status Report
高分子ゲル網目を活用した分子クラウディングモデルの構築
Project/Area Number |
19K15617
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
呉羽 拓真 東京大学, 物性研究所, 特別研究員 (60836039)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高分子ゲル / 力学特性 / ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の一つである、分子クラウディング効果を発揮する高分子ゲル網目のモデル化を行った。ゲル網目の主骨格となる高分子には、高い生体適合性と温度応答性を有するポリ(オリゴエチレングリコールメタクリレート)と架橋剤を選択し、フリーラジカル重合により合成した。ポリ(オリゴエチレングリコールメタクリレート)は、側鎖にエチレングリコールを有し、このエチレングリコール数(側鎖の長さ)によって異なる温度応答性を示すため、この側鎖の長さが異なる2種のモノマー共重合比を変える事で、ゲル網目全体の密度とダイナミクスが劇的に変化する温度(体積相転移温度)を制御できる。実際に、種々のオリゴエチレングリコールメタクリレートモノマーを組み合わせ、多種多様な密度とダイナミクスを有する一連のゲル網目を合成した。特に当該年度では、これらゲルをモデル化するため、基礎物性の一つである力学特性を評価した。実際に、昇温することでゲルを構成するポリ(オリゴエチレングリコールメタクリレート)鎖同士が会合し、物理架橋点として作用するため、弾性率の増加を観測することに成功した。また、側鎖の長い成分がゲル中に増えると、高分子鎖の会合が抑制されるため弾性率の増加も抑制されることを見出した。 以上の知見は、来年度に続くゲル網目内部での分子ダイナミクス評価の際に重要な因子であり、すでに学術論文として投稿している段階である。それに加え、ゲル網目のダイナミクスの観測手法である動的光散乱法の新たな解析方法も提案することができ、学術論文として認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において、研究テーマは順調に進展したと考えられる。本研究課題の目的である分子クラウディング環境として、ゲル網目の合成および物性評価を行い、次年度につながる成果を得ることができた。また、ソフトコロイドガラスのダイナミクス評価法も提案し、分子クラウディング効果において重要な添加高分子鎖の影響を抽出する技術やノウハウを得ることができ、学術論文として認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進としては、合成した一連のモデルゲル網目に対し、蛍光分子マーカーを添加することで、その内部で揺動する分子の運動がゲル網目自身の運動とどのように相関しているのかを評価する。その評価手法である動的光散乱法と蛍光相関分光法の装置を独自で作成する。
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Causes of Carryover |
当該年度で購入予定であった動的光散乱法と蛍光相関分光法の種々の光学装置備品の納期が遅れたため、次年度に購入することとなり、当該助成金が生じた。また、翌年度分として請求した助成金と合わせ、必須の光学備品や装置器具を購入し、本研究の目的である2種のダイナミクスをリアルタイムで同時測定可能な装置を完成させる予定である。
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