2020 Fiscal Year Annual Research Report
ラセン高分子の記憶操作技術に基づく高感度キラルセンシング
Project/Area Number |
19K15621
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
廣瀬 大祐 金沢大学, 物質化学系, 助教 (60806686)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ポリアセチレン / らせん誘起 / 記憶 / 不斉増幅 / ビフェニル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に見出した明確なホスト構造を持たないpoly-1の特異な分子認識能力について中心的に調査を行った。キラルアンモニウム塩を強く認識したことから、そのカウンターアニオンの影響を評価したところ、テトラフェニルボレートの場合には殆ど誘起円二色性(CD)を示さなかったのに対して、テトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート(BArF)の場合には、一方向巻きラセン構造に形成に伴う強い誘起CDを示した。さらに、トルエンのような非極性溶媒中では強い誘起CDを示す一方で、テトラヒドロフランのような極性溶媒中では一切示さないことから、poly-1とキラルアンモニウムBArF塩との相互作用は比較的弱く、キラルアンモニウムBArF塩の高い水素結合供与性が分子認識に強く貢献していることが明らかとなった。キラルゲストの光学純度とラセン巻方向過剰率の間の不斉増幅特性(Majority則)については、40% eeで一方向巻きになる程度と、従来法と同様の結果に留まっていた。しかし、キラルゲストを過剰量用いた際に、poly-1が集積した会合体を形成することにより誘起CDがさらに増幅する現象が新たに見いだされた。この一方向巻きラセン構造の形成と、集積による会合体形成の階層的な二段階の不斉増幅を経ることで、10-4 % eeオーダーの極めて低純度なキラルアンモニウム塩のキラリティ検出に成功した。従来のCDキラルセンサーでの報告では10-3% eeオーダーの検出が限界であったため、従来法では検出困難な高難度キラルセンシングに繋がる新たな知見を得ることに成功した。今後の条件最適化により、不斉の起源の解明に繋がり得るさらなる微小キラリティの直接検出が可能になることが期待される。
|
Research Products
(2 results)