2019 Fiscal Year Research-status Report
光加工性・光安定性・光学物性を並立する相反機能材料の開発
Project/Area Number |
19K15629
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
正井 宏 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (70793149)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 光加工材料 / 金属アセチリド錯体 / ソフトマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究の鍵となる金属アセチリド錯体を架橋点として有する高分子ネットワーク材料を合成し、その光学・機械的特性を探索した。まず初めに、新たに白金アセチリド錯体を母骨格とする架橋剤を開発した。この両端にイソシアナート基を有する錯体型架橋剤は、ヒドロキシル基を側鎖とするプルランやポリビニルアルコールに架橋剤として作用し、目的の高分子材料を得た。高分子材料の光学・機械的特性を調査したところ、白金錯体に由来する発光型酸素センシング能を有することが確認された。加えて、錯体にロタキサン構造を導入したところ、ロタキサン構造に基づく被覆効果によって、その燐光発光性を増強するだけでなく、架橋部位の不均一性が解消され、高分子材料の機械的強度を向上させるという予想外の効果が明らかとなった。その結果、ヒドロゲルにおける発光性と機械的強度向上のための方法論として、ロタキサン構造活用の有用性が示された。 続けて、得られた高分子材料に酸と光を同時に作用させたところ、その協働的な作用によって材料が分解することが明らかとなった。一方で、本反応には望まない副反応が同時に生じることも明らかとなった。そこで、ロタキサン構造を導入した架橋剤を用いて同様の検討を行ったところ副反応が抑制可能であることが明らかとなった。今後はロタキサン型架橋剤を中心に、光加工における反応パラメータを系統的に探索し、加工条件の最適化を行うとともに、白金錯体に由来する諸物性に基づく光機能の加工を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、金属アセチリド錯体を架橋剤とする高分子ネットワーク材料の合成と、得られた材料の各種物性測定と加工性の実証を行った。本年度の研究によって、材料の燐光発光性が示されると同時に、本研究の目的である酸と光の共同効果による加工の実証に成功した。また、当初想定していなかった結果として、架橋剤にロタキサン構造を導入することで燐光発光の増強だけでなく高分子ネットワーク材料の機械的強度を向上させることにも成功した。従って、今年度の研究はおおむね順調に進展しており、一部の成果に関しては当初予期していなかった成果を得られたといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は光加工における反応パラメータを系統的に探索し、加工条件の最適化を行うとともに、白金錯体に由来する諸物性に基づく光機能の加工を目指す。研究当初の予定では、金属アセチリド錯体を架橋剤とした高分子材料を想定していたものの、本反応には望まない副反応が同時に生じることも明らかとなった。そこで、ロタキサン構造を導入することで副反応を抑制できたことから、今後はロタキサン型架橋剤を中心に検討を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
研究を進めるにつれて、材料加工において予期せぬ副反応が生じていることが明らかとなった。これを解決するために、本年度は実材料ベースの研究の前に、ミクロスケールの予備的研究を行う必要があった。従って本年度の研究費としてスケールを下げた研究が多くを占めたことに由来して、次年度使用額が生じた。 次年度は材料スケールを上げた研究を主として加速的に行うために、次年度繰越金と請求分を用いる。
|
Research Products
(7 results)