2020 Fiscal Year Research-status Report
光加工性・光安定性・光学物性を並立する相反機能材料の開発
Project/Area Number |
19K15629
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
正井 宏 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (70793149)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光加工 / ソフトマテリアル / 光機能 / 弾性率 |
Outline of Annual Research Achievements |
光加工材料は材料をマイクロスケールで加工するための有用な技術であるものの、材料が光に不安定という本質的な問題点を抱えている。そのため紫外光によって材料が容易に変性するなど、材料を長期利用することが困難とされてきた。特に光機能材料群は微細加工によって高密度な機能化が期待されるものの、これらの光機能は光加工と同じ光吸収に基づくため、光学機能素材は光加工が不可能とされてきた。本研究ではこの本質的な問題を解決するために、光に加えて第二の刺激を用いたデュアルアクティベーションに基づく光加工を行うことで、トレードオフとされてきた関係性を打開する。光のみではなく、酸が共存する条件下でのみ反応が生じる特殊な分子群を高分子材料中に導入し、加工時には光ともう一つの刺激を用いたデュアルアクティベーションによって光加工を行う。一方で、加工後は片方の刺激を除去することによって、光に対する安定性を両立可能である。この手法によって形状・弾性・光物性のマイクロパターニング制御を実現する。本年度は、白金錯体を架橋剤としてたポリマーネットワーク材料において、デュアルアクティベーションを実証した。これは光照射に対して安定な材料でありながらも、第二の刺激存在下では光加工性を示し、材料のマクロ物性を制御することに成功した。本材料は光安定性を有しながらも、光を用いた加工性、光成形性、光による形状プログラム変形能、そして光機能性を示すという、相反機能を有することが明らかとなった。さらに、デュアルアクティベーションシステムをより産業的に実用性が高い概念へと発展させることを目的として、より安価な非レアメタル元素を用いたデュアルアクティベーションにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
光機能と両立可能な相反光機能としては、発光性の実証にとどまったものの、下記の2つの相反光機能については、当初の予定以上の成果が明らかとなった。 1. 第二の刺激共存下、微細な領域に光を照射することで、膨潤挙動を介した材料形状のプログラム変形に成功した。これは光単独の刺激に対しては高い安定性を有していることも明らかとなり、光環境下で利用可能な材料に対する。高次形状制御手法であるといえる。 2. 光重合によって調製・成形可能な材料に対しても、同一波長の光照射に基づく光加工・光機能発現に成功した。光重合は光機能とは両立できない相反機能であり、本材料によってもたらされる新しい概念である。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲル材料よりも高密度な高分子材料に対して反応性を系統的に探索する。ゲル材料に比べて、高分子鎖が複雑に絡み合った高密度材料中における化学反応を制御することは、基礎化学という観点においても重要な課題である。高分子としてはポリカーボネートなどを選択し、活性化ユニットを架橋剤あるいは母材に数%含ませたエラストマー材料や高分子ガラス材料を得る。エラストマー材料に対しては酸を溶液として浸潤させ、光による反応性の制御を探索する。より高密度な材料に対しては、気体状態の酸や固液界面での反応を利用する。これによって高密度材料中における制御についてより詳細に理解するとともに、材料適用範囲の拡張を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により分散登校を行った結果、合成実験を実施できなくなるなど研究活動に制約が生じた。この影響により残額が生じたが、次年度以降に繰越しを行なうことで当初計画していた研究成果を達成できる見込みである。
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Research Products
(8 results)