2019 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication and extreme property of the hydrogel free of structural inhomogeneity
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19K15630
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 慎太郎 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (40806642)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ポリマーゲル / 力学特性 / ボトルブラシポリマー / 制御重合 / 高分子合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリマーの三次元網目と溶媒からなるポリマーゲルは、生体組織の代替材料等として用いられるが、一般に様々な構造欠陥を持つため力学的に弱い材料である。本研究では、ダイアモンドなどの共有結合結晶の構造的特徴にヒントを得て、欠陥を極限まで排除したポリマーゲルの創製を目指す。具体的には、ゲルの原料となるポリマーユニットに側鎖を導入することで直線性・剛直性を高めた構成要素(「マクロアトム」)をつなぎ合わせることで、ポリマー鎖の柔軟性に由来する構造欠陥のない新規「マクロアトム」ゲルを創製し、ゲルがもつ力学特性の極限に迫ることを目的としている。 初年度となる2019年度には、マクロアトムゲルの調製方法を検討した。原料となるマクロアトムは、各腕が剛直なボトルブラシ型ポリマーとなっている単分散な星型ポリマーである。まず、主鎖を4官能性重合開始剤を用いた原子移動ラジカル重合により合成したのち、各末端の化学修飾により架橋反応のための反応点を導入した。末端修飾反応として、アジド化とチオール-臭化物置換反応を検討し、導入可能な反応点のバリエーションおよび反応点の活性の観点から、後者の方法が最適であることを見出した。その後、主鎖上に重合開始点を導入し、二段階目の重合を行うことでマクロアトム合成を試みた。側鎖の重合方法としてATRP、可逆的付加開裂連鎖(RAFT)重合、開環重合を検討した結果、ATRPがその後のゲル調製の観点からも最適であることが分かった。これにより、構造制御されたマクロアトムを合成する手法を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は(a)マクロアトムとそれを用いたゲルの合成法の確立、(b)ゲルの構造・物性評価、(c)分子設計と構造・物性相関の解明、そして(d)極限的力学特性をもつゲルの創製、の4段階で実施する計画である。初年度である本年度は主に(a)の検討を重点的に行い、その最終段階に到達している。具体的には、本研究のアイデアの要であるポリマー鎖の剛直性制御のためのボトルブラシポリマーの精密合成、およびゲル合成のための高効率かつ制御性のよいカップリング反応の探索が完了している。主にゲル形成のための末端間反応の探索および条件の最適化に想定以上の時間がかかったものの、想定の範囲内であり、おおむね順調に進行していると考えている。また、初年度に合成法の検討を重ねたことによるノウハウの蓄積は、次年度に実施予定の分子設計の改変を効率的に進める際に役に立つと思われる。したがって、次年度の研究により最終目標は充分に達成可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に確立したマクロアトム合成法を用いてマクロアトムゲルを合成し、その構造と物性をX線散乱測定や各種力学試験等により評価する。また分岐数や鎖の長さ、剛直性などの分子設計を変化させたサンプルも合成し、分子設計が構造・物性に及ぼす効果を明らかにする。その知見に基づき、極めて均一な網目構造に基づく極限物性を発現するゲルの創製を目指す。
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Causes of Carryover |
当初計画では、本年度にサイズ排除クロマトグラフィーシステムを導入する予定だったが、合成法の検討の結果、研究開始前に想定していたものとは異なる構造のポリマーを使用することとなり、そのキャラクタリゼーションが既存設備で対応可能であることが判明したため、導入を取りやめている。この変更は、研究計画としては本質とは関係ない軽微なものであるが、これにより次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせた助成金は、引き続き合成用試薬・器具類・測定機器消耗品費、および共同利用施設の利用や成果発表に係る旅費として支出するほか、創製したゲル材料の力学試験を効率的に行うための試験機の導入にも充てる予定である。これにより、当初の想定より円滑に最終目標を達成できると考えている。
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