2019 Fiscal Year Research-status Report
Wide-Band Viscoelasticity Measurement of Single Polymer Chain by Atomic Force Microscope
Project/Area Number |
19K15632
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
梁 暁斌 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (60733201)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 単一分子鎖 / 原子間力顕微鏡 / 高分子鎖粘弾性 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子系の最も基礎的な研究対象としての単一合成高分子鎖に関しては、これまで一本鎖のダイナミクスを調べられるツールは少なく、すべての高分子物性理論が単一分子鎖理論をその土台として利用していながら、その部分を実際に実験的に調べる方法が殆どなかったのが現状である。そこで、本研究では原子間力顕微鏡を用いた単一高分子鎖の広帯域周波数粘弾性の研究を行った。2019 年度に、市販原子間力顕微鏡(Bruker社製のMultiMode 8)と広帯域周波数ロックインアンプ(エヌエフ回路設計ブロック社製のLI5655)を組み合わせ、単一高分子鎖の非平衡状態を扱い得る「動的ナノフィッシング」装置の構築を実施した。ロックインアンプのパラメター調整により、実験データの低ノイズ化を実現でき、現時点でkHzの周波数帯域で単一高分子鎖の弾性係数と粘性係数を計測可能となった。 従来の準静的ナノフィッシングと比べて、初めて単一高分子鎖の粘性情報を実測した。高分子鎖粘弾性の分子量依存性を調べ、Kirkwoodモデル(高分子鎖の流体力学的理論)の予測と一致することが分かった。更に、高分子鎖の有効粘度は溶媒の固有粘度に関わらず、高分子と溶媒間の相互作用に依存することが明らかになった。なおこの研究についての論文は. J. Polym. Sci., Part B: Polym. Phys.という学術雑誌に発表している。( Vol. 57, pp1736-1743, 2019)以上の成果によって高分子一本鎖のレオロジー挙動の理解を深め、ナノフィッシングを次世代のサイエンスの重要課題として踏み込ませることが期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「動的ナノフィッシング」装置の構築を完了した。単一高分子鎖粘弾性の分子量依存性により、高分子鎖の有効粘度というパラメータの意味を明らかにした。今までの研究が計画通りに進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで、原子間力顕微鏡と広帯域周波数ロックインアンプを組み合わせ、低ノイズのレベルでkHzの周波数帯域で単一高分子鎖の弾性係数と粘性係数を実測できた。今後、高分子鎖のダイナミクスを追求するため、測定の周波数帯域を低周波と高周波へ拡張したいと考える。ピエゾアクチュエータの活用とカンチレバー再加工の手法を用いて、6桁におよぶ広帯域周波数に拡大することが来年度の方針である。また、温度可変装置をAFM装置に導入し、高分子鎖粘弾性の温度依存性を検討したいと思う。最後に、動的ナノフィッシングがより豊富な情報を与えるという利点に着目し、機能性高分子の内部構造と機能メカニズムの解明を今後の議論の焦点にしていきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由;カンチレバーの購入費が計画より少なく済んだため。 使用計画;現在準備中の英語論文の英文校正費に支出予定である。
|
Research Products
(2 results)