2020 Fiscal Year Research-status Report
Creation of vitrimers with multiple-type cross-links for tailor-made physical property tuning
| Project/Area Number |
19K15633
|
|---|
| Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
|---|
Principal Investigator |
林 幹大 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70792654)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
| Keywords | vitrimer / アイオノマー / エラストマー / 結合交換 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、目的とする結合交換型動的共有結合架橋性材料（vitrimer）に関して、アイオノマー骨格を有するdual架橋性vitrimerの新規調製法の確立に注力して研究を行った。具体的には、イオン性相互作用を介した物理架橋と結合交換性動的共有結合架橋を複合的に組み入れたdual架橋性（二重架橋性）新規vitrimer材料の調製を達成した。イオン凝集（イオンクラスター）による力学物性の向上と、結合交換ダイナミクスへの影響を詳細に調査した。具体的には、イオンクラスターの形成は、結合交換ダイナミクスを著しく遅延させることがわかった。これは、結合交換に関与する官能基を含むポリマー鎖のダイナミクスが、イオンクラスターの形成により遅延されることに起因する。この結果を活かすと、成形加工は可能であるものの、高温での線膨張率が著しく小さく寸本安定性が高い新規機能性材料を調製することができるようになる。このような知見はこれまで報告がなされておらず、vitrimer分野およびアイオノマー材料分野両方において、学術的な意義が高い。本研究内容は、国際査読付き学術誌Molecular Systems Design & Engineeringへ報告した。また、これまでに報告してきたvitrimer材料に関する知見をまとめ、国際査読付き学術誌Polymersにおいて総説論文を発表した。その他、記憶更新性形状記憶能など、新たな機能を発現したvitrimer材料に関しても、国際学術誌および専門誌での解説記事を4件発表した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Vitrimer材料は、共有結合架橋が施されているにも関わらず、高温で結合交換が進行し、修復性・リサイクル性・接着性など、実用上の有用機能を発現する。そのため、その物性制御法の確立は、実用展開において重要となる。本研究課題では、vitrimer材料の新規物性制御法を確立することを主な目的として遂行している。
2019年度では、「架橋密度」と結合交換時間スケールついて、我々オリジナルのモデルポリマーを用いて、これらの相関を詳細に抽出した。得られた結果について学術的新規性が認められ、国際査読付き学術誌Macromoleculesに掲載された。2020年度は、Dual架橋性vitrimerに関して、申請者オリジナルの方法を用いて、アイオノマー型vitrimerの調製法を確立した。イオンクラスター構造の形成により、結合交換特性がどのように影響されるか、という問いについて、X線散乱測定およびレオロジー特性によって調査した。このような知見はこれまで報告されていないため、学術的新規性が高かった。
このように、vitrimer材料に関する物性制御法や、dual架橋による新規vitrimer材料の調製は2019年度および2020年度で達成できた。
|
| Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、物性だけではなく、その機能について焦点を当てた研究を遂行していく。例えば、その接着特性は興味深い。これまで我々は、vitrimer樹脂は、同一樹脂間に強接着性（自己接着性）が働くことを偶然見出している。樹脂の一部を重ね、微弱押圧下で加熱すると、重ねた部分が強接着した。これは、加熱による結合交換が異表面間で進行し、高分子鎖が表面間をまたいで化学的に連結されたことを示す。一方で、これまで結合交換時間スケールと接着力の相関など、基礎的性質についての知見は得られていない。また、vitrimer材料は、表面傷の修復性などの有用機能を示す。同様に、結合交換時間スケールと修復力の相関は明らかにされていない。本課題で扱っているdual架橋vitrimerを対象試料として、このような結合交換ダイナミクスと機能との相関について調査を遂行していきたい。
さらに、これまで実用応用への課題とされていた、無触媒含有下でのvitrimer調製および、結合交換活性化温度の低温化・結合交換速度の向上について、dual架橋構造を基に追究していく。
|
| Causes of Carryover |
コロナの影響により、当初予定していた学会発表が中止、もしくはオンライン開催となったため、次年度へ持ち越す。翌年度では、モノマーや消耗品購入費として使用する。
|
Research Products
(14 results)
