2020 Fiscal Year Annual Research Report
ナノフィラー表面修飾官能基が高分子ナノコンポジットの結晶化挙動に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
19K15634
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
引間 悠太 京都大学, 工学研究科, 助教 (50721362)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | かご型シルセスキオキサン(POSS) / 結晶化 / 超高速DSC / ナノフィラー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に得られたかご型シルセスキオキサン(POSS)添加がアイソタクティックポリプロピレン(iPP)の高過冷却度場での結晶化に及ぼす特異な効果についてより詳細に検討を進めた.ホットステージ上で偏光顕微鏡観察を実施したが,POSS添加によるiPP結晶のモルフォロジー変化はほとんど観察できなかった.溶融状態のモルフォロジーを確認したところ直径数十μm程度のPOSS凝集体が多数確認された.そこで高せん断条件下で溶融混練可能なミキサーを新たに用い,メチルPOSSをiPP中へと分散させた.再度モルフォロジー観察を実施した結果,溶融状態での凝集体数は減少した.溶融混練時のミキサー回転速度を変化させた試料の電子顕微鏡観察を実施した結果,ミキサーの回転速度の違いがPOSSの分散性に大きく影響していることが確認された. 分散性が高い条件下でiPP/メチルPOSS複合材料を溶融混練し,POSS添加量に対する高過冷却度条件下でのiPP等温結晶化挙動について超高速示差走査熱量測定(超高速DSC)により再度評価を行った.その結果,POSS添加は40-90℃では結晶化を遅延し,100℃以上の温度範囲で結晶化を促進するという特異な添加効果があることが確認された.また分散性の向上や添加濃度の向上とともにiPPのガラス転移温度の上昇が確認された.またiPP/メチルPOSS複合材料の冷却過程の結晶化挙動について様々な冷却速度条件で調べた結果,10 K/s以下の冷却速度ではメチルPOSS添加により結晶化温度範囲全体が高温側にシフトしたのに対し,10 K/s以上の温度範囲では結晶化開始温度の向上と結晶化終了温度の低下,すなわち結晶化温度範囲の広範囲化が確認された.メチルPOSS添加がiPP結晶化に及ぼす特異な効果は,結晶核剤効果と,相互作用による分子鎖のモビリティの抑制によるというメカニズムを提案した.
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Research Products
(4 results)