2019 Fiscal Year Research-status Report
合成・量子化学計算・データ科学的手法によるゾル-ゲル反応の解析
Project/Area Number |
19K15637
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
塚田 学 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (60632578)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ゾル-ゲル反応 / シロキサン / シルセスキオキサン / アルコキシシラン / 架橋型アルコキシシラン / 自立膜 / 熱伝導率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題の目的は、合成化学者の経験と勘に頼っていたトリアルコキシキシランのゾル-ゲル反応、またゾルから得られる材料の物性をデータ科学的手法により解析し、ゾル-ゲル反応における「ゾルの分子量やゲル化点はモノマーのどのような物性と相関関係があるのか?」という問いに対する答えを明らかにすることである。 2019年度は、エチニル基やフェニル基などを架橋部位とする計5種類の架橋型アルコキシシランの加水分解重縮合反応(ゾル-ゲル反応)により、架橋型ポリシルセスキオキサンを合成した。反応時の水分量により、どのように分子量が変化するかを調べた。架橋部位の構造が柔軟なアルキル架橋のもの、例えばビス(トリエトキシシリル)エタン(BTES-E1)やビス(トリエトキシシリル)メタン(BTES-M)などは、水分量を調整することで幅広い分子量のポリシルセスキオキサンゾルが得られた。一方で、架橋部位が剛直な多重結合やベンゼン環を含む架橋型アルコキシシランを用いた場合においても(例えば、ビス(トリエトキシシリル)エチレン(BTES-E2))、水分量で調整できる分子量の範囲は狭いものの、数千から数万程度のポリシルセスキオキサンを調製できることが分かった。BTES-M、E1およびE2のポリマーゾルを用いて、自立膜を調製した。BTES-MとE1は、自立膜が得られたが、BTES-E2は膜に亀裂が入りきれいな自立膜は得られなかった。BTES-E1の自立膜の熱拡散率を測定したところ、約1 x 10-7 m2/sであることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、各種アルコキシシラン類のゾル-ゲル反応により、ゾル状のポリシルセスキオキサンを調製することに成功した。また、反応時の水分量とゾルの分子量についても、データを得ることができた。数種類のポリシルセスキオキサンゾルを用いて自立膜を調製することに成功し、BTES-E1の系においては本研究の重要な物性値である熱拡散率の測定に至った。当初予定していた理論計算等も始めており、これらのことから概ね順調と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
架橋型アルコキシシランのゾル-ゲル反応を引き続き行い、反応時の水分量とゾルの分子量に関するデータを増やしていく。また、2019年度に用いなかった架橋型アルコキシシランに関しても随時反応を検討していく。また、原料分子の量子化学計算を行うことで、アルコキシシラン類のミクロ物性を明らかにする。このミクロ物性と、反応時の水分量とゾルの分子量の相関関係について考察する。 調製した架橋型ポリシルセスキオキサンを用いて自立膜を調製し、それらの熱伝導率を測定していく。熱伝導率のデータに関しても、原料である架橋型アルコキシシランのミクロ物性とどのような関係があるのかを明らかにする。 また、アルコキシシランの系ではなく、ポリチオフェンの系などにも本研究の流れを適用したいと考えている。ポリチオフェン合成における反応条件と得られるポリチオフェンの物性についてデータを集める予定である。
|
Causes of Carryover |
2019年度は、合成実験が中心となったため、共有実験機器の利用回数が当初の予定よりも少なかった。また、すでに所有していた試薬類を使って実験を行うことができたので、試薬購入費が抑えられた。 2020年度は、試薬類の購入や共用実験機器の使用頻度が当初計画より多くなると見積もっており、これらに繰越金を用いる。
|