2021 Fiscal Year Annual Research Report
活性な空軌道を持つカゴ型ボレートに基づく多様な結合の構築と高分子機能への展開
Project/Area Number |
19K15639
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
高橋 明 神奈川大学, 工学部, 助教 (50815660)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ボラトラン / トリエタノールアミン / ルイス付加体 / 加水分解 / ホウ酸エステル |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる2021年度の研究では、カゴ型ボレート分子の1つであるボラトランの高分子側鎖における選択的な構造変換手法、およびそれに伴う特異的な物性変化について明らかにした。今回の研究期間全体を通じた成果より、これまで高分子化学において全く未活用であったボラトラン分子が果たす独自の役割・学術的位置付けが明確となり、新たな物質変換化学の開拓を促す重要な基盤的知見を獲得した。 本研究では具体的なカゴ型ボレートとして、代表的なボラトラン分子であるトリエタノールアミンボレート(TEAB)を選択し、市販の原料から2段階でTEAB含有メタクリレートモノマーの合成法を確立した。このモノマーを用いたラジカル重合により得られたポリマーは、側鎖の剛直なカゴ構造に由来する優れた熱物性を示した。一方、このポリマーは水に加えるだけでTEAB側鎖を柔軟なトリエタノールアミン(TEA)側鎖へと完全に加水分解でき、それに伴い熱物性と溶解性の劇的な変化を示した。さらに、TEA側鎖はホウ酸エステル試薬と混合するのみで高効率にTEABへと再変換され、加水分解前と同様の物性を復元した。以上の結果から、TEABおよびTEAは簡便なプロセスに基づいて材料物性を任意かつ劇的に変換するための機能性ユニットとして働くことを明らかにした。 また、側鎖にTEABおよび疎水性部分を有するランダムコポリマーは水中に一旦溶解した後、水溶性が自発的に低下する特異な挙動を示した。すなわち、側鎖TEABの加水分解を経てポリマーの水溶性が低下することが分かった。この現象はいわば、「水との反応により親水性物質が疏水化する」現象と捉えることができ、一般的な分子における加水分解前後の水溶性変化とは正反対のものである。この特徴的な性質から、TEABは水を化学的な「トリガー」として用いる水応答材料に新たな設計原理をもたらすことが期待される。
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