2019 Fiscal Year Research-status Report
アセンジカルコゲノフェンジオン骨格を有する有機近赤外フォトディテクター材料の開発
| Project/Area Number |
19K15646
|
|---|
| Research Institution | Tohoku University |
|---|
Principal Investigator |
川畑 公輔 東北大学, 理学研究科, 助教 (10710212)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
| Keywords | 近赤外光 / 有機半導体 / 有機電界効果トランジスタ / ドナーアクセプター / キノイド |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
近赤外領域（特ににSi半導体の吸収端である1100 nmを超える領域）に及ぶ光吸収能、高い電荷輸送能および大気安定性を併せ持つ可溶性有機半導体の開発を目的として、電子受容性の高いベンゾジチオフェンジオンおよびナフトジチオフェンジオンの両端にオリゴチオフェンを連結させた一連のドナーアクセプタードナー（D-A-D）型分子を合成した。また、オリゴチオフェンの両端をベンゾジチオフェンジオンを挟んだ一連のA-D-A型分子についても合成した。
D-A-D型分子については末端チオフェンの数が増えるにしたがい、主たる吸収帯が可視領域から近赤外領域へと大きくレッドシフトし、吸収端波長は800 nmから1050 nmに及んだ。薄膜においては主たる吸収帯は二つに分裂し、長波長側の吸収帯の吸収端波長は約1100 nmから1700 nmに及んだ。一方、A-D-A型分子については、中央のオリゴチオフェンドナーの拡張に関わらず、どの分子も最大吸収波長が薄膜においては約850 nmの吸収帯を有し、その吸収端は1300 nmに及んだ。
電気化学的に見積もったHOMOおよびLUMOのエネルギー準位は、ドナー部位の拡張に従いHOMO準位は-5.0 eVを超えない範囲で上昇した一方で、LUMO準位はどれも-4.0 eVを下回る値であった。この低いフロンティア軌道エネルギー準位は電荷輸送の大気安定性に重要と考えられ、実際に、これらの半導体分子を活性層として用いた有機電界効果トランジスタを作製し評価したところ、その多くが大気中で両極性トランジスタとして安定に駆動し、電子およびホール移動度が最高で0.05 cm2/Vsを上回る良好な半導体材料であることを明らかにした。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度重点的に利用したベンゾおよびナフトジチオフェンジオン骨格は、研究代表者が過去に報告した分子骨格であり、キノイド骨格を形成する最終ステップでの収率が低く、再現性も悪い点が大きな問題であったが、昨年度の初期段階でこれらの合成の問題点を克服することができた。また、A-D-A型分子の合成においては、チエノキノイドアクセプター部位をハロゲン化した共通中間体を合成することで、クロスカップリングによるモジュール合成を可能とすることができた。このため物質合成をスムーズに進行させることができたことから、その後の物性・デバイス評価への展開も、当初計画したとおりに順調に進行しており、いくつかの化合物については、目標としている吸収波長および電荷輸送能を達成することができた。
|
| Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、硫黄を含むキノイド骨格を用いた半導体分子の合成を重点的に行ってきたが、本年度は、硫黄の代わりにセレンや酸素を含むアセンジカルコゲノフェンジオン骨格へ展開する予定である。カルコゲン原子の置換による電子構造や分子間相互作用への効果が、吸収波長や電荷輸送にどのような影響を与えるのか調査し、目的の物性・機能を発現させるための分子設計指針を明らかにしたい。また、合成した半導体分子を近赤外フォトディテクターデバイスの活性層として用いるためには、p型およびn型半導体の適切な組み合わせの選択が重要となることから、合成が済んだ化合物から順次これらの組み合わせについて、既存の材料も含めて検討していく予定である。
|
| Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大の影響により、学会の中止、および物品の調達（主に輸入試薬・物品）が困難になったため、年度内の納品に遅れが生じたため。
|
Research Products
(2 results)
