2019 Fiscal Year Research-status Report
湾曲状芳香族化合物の歪み構造による光物性と光反応制御
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19K15649
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
山田 美穂子 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70726257)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 湾曲状芳香族化合物 / 光化学 / 光物性 / フォトクロミズム / 異性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
フォトクロミック反応など光異性化反応においては、順反応と逆反応は相補的な関係にあるため、独立した制御は困難である。本研究では、歪みの調節が可能なモチーフに湾曲状芳香族構造、フォトクロミック反応系モチーフとしてヘキサトリエン構造を有する化合物の合成を行っている。また、これらを用いて、分子の静的・動的な歪み構造に注目してポテンシャルエネルギー曲線をスイッチさせ、光物性・反応性に与える効果を系統的に評価・検討することで、光反応における順反応と逆反応の独立な制御を目指している。 湾曲状芳香族分子コラニュレンとターアリーレン型ヘキサトリエンの組み合わせにより湾曲状歪み構造を有する新規有機フォトクロミック分子を設計・合成した。1,2,7,8-テトラブロモコラニュレンを5-アリール-2-メチルチオフェンボロン酸ピナコールエステルと鈴木・宮浦カップリングすることで、2つのターアリーレンユニットを有する化合物が得られたことをMALDI-MSにより確認した。この化合物を溶液中で紫外光照射したところ、UV-visスペクトル及び1H NMRスペクトルが変化し、さらに可視光下に放置すると、これらのスペクトルは紫外光照射前の状態に戻ることを観測した。この結果から、この化合物がフォトクロミック反応を示すことを明らかにした。 また、光物性と光反応性を検討するモチーフとして、湾曲状芳香族コラニュレン骨格を有する新規有機化合物を合成し、NMR、UV-visなどの各種分光分析により光物性を検討した。さらに、得られた新規化合物を配位子として金属イオンと反応させ、錯体形成挙動を追跡すると共に光物性について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
湾曲状芳香族化合物の歪み構造による光物性と光反応性について検討するモチーフとして、湾曲状コラニュレン骨格を有する新規有機化合物を複数設計・合成することに成功した。これらの化合物うちターアリーレン骨格を有する化合物についてフォトクロミック反応挙動が観測されており、研究は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた湾曲状芳香族骨格を有する新規化合物の光物性及び光反応性に関する詳細な検討を行う。また、必要に応じて化学構造修飾により化合物の構造・物性の最適化を行う。さらに、平面状芳香族骨格を有する化合物との比較を行い、歪み構造が光物性及び光反応性に及ぼす影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、年度末の学会の中止等予想外の変更があったため。延期した成果発表については来年度行う。
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