2019 Fiscal Year Research-status Report
Design of high-performance delayed fluorescence materials with controlled spin-orbit coupling and their application in organic light-emitting diodes
Project/Area Number |
19K15651
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
朴 仁燮 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 学術研究員 (20830938)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 熱活性化遅延蛍光 / 青色有機ELデバイス / スピン軌道相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者らが最近見出したカルコゲン原子の摂動によりスピン軌道相互作用を増大させる画期的なTADF分子の設計手法を拡張・発展させ、分子を構成する電子アクセプター(A)に種々のカルコゲン原子(O, S, Se)を導入した青色TADF発光材料を新たに開発し、最低励起三重項状態(T1)から最低励起一重項状態(S1)へのアップコンバージョン速度に及ぼすカルコゲン置換の効果を量子化学計算による理論解析および光物理的特性評価に基づき詳細に検討した。具体的には、カルコゲン置換したA部位に種々の電子ドナー(D)を導入したD-A型分子を設計・合成した。Gaussian16プログラムを使用して、基底状態(S0)の分子構造の最適化ならびに電子状態の計算にはPBE0/6-31G(d)法を、S1、T1状態の計算には時間依存密度汎関数法 (TD-DFT)法を適用して、量子化学計算を行った。得られたS1、T1状態のエネルギーからT1-S1間のエネルギー差を計算した。T1状態の構造でAmsterdam Density Functional(ADF)プログラムを使用して、カルコゲン置換によってスピン軌道相互作用の増大が期待できることを理論的に明らかにした。次いで、合成化学的手法により実際の材料を合成・精製した。化合物群について、発光量子収率および発光寿命測定を行い、T1-S1間のエネルギー差およびスピン軌道相互作用がアップコンバージョン速度に与える効果を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、種々のヘテロ芳香族骨格にカルコゲン原子を導入し、Gaussian 16プログラムに実装されているTD-DFTを用いて、青色発光可能なワイドギャップなTADF分子について、S0、S1、T1のエネルギーを精密に計算した。S0とS1のエネルギー差から発光波長を、S1とT1のエネルギー差から三重項励起状態と一重項励起状態との間のエネルギー差を算出した。また、ADFプログラムに実装されているZeroth-Order Regular Approximation(ZORA)法を用いることで、新たにスピン軌道相互作用の制御手法を通常の量子化学計算と融合することにより、ハイスループットかつ革新的なTADF発光材料の設計指針を構築を成功した。このような設計指針で設計したTADF分子について、実材料を精密合成・精製し、基礎的な光学物性評価をした。ここで、TADF特性の有無、発光色、発光量子収率、発光寿命などの光物理的特性について詳細に検討を行った。特に、固体薄膜状態における精密な静的・動的分光学測定により、新規TADF分子のT1-S1間のエネルギー差およびスピン軌道相互作用とアップコンバージョン速度の関係を実験に基づき解析し、量子化学計算結果との比較を行い、実験と理論の両面から合理的な発光材料設計の手法を確立することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究計画に従って青色有機ELデバイスの作製と評価を集中的に実施し、三重項励起状態と一重項励起状態との間のエネルギー差およびスピン軌道相互作用の同時制御に基づくロールオフの低減に関して、実デバイスにおける解析と効果の検証を進める。特に、TADF分子の発光寿命・アップコンバージョン速度とデバイスのロールオフ特性の相関に着目することで、発光寿命の短縮がロールオフの低下に繋がることを実証する。発光寿命・アップコンバージョン速度が異なるTADF分子を用いた有機ELデバイスの特性を系統的に調査することで、さらなる高効率化と低ロールオフ化を両立できる発光材料系を開拓する。最終的には、世界最高レベルの青色有機発光材料とそれを用いた青色有機ELデバイスの創製が、アウトプットとなる計画である。
|