2019 Fiscal Year Annual Research Report
有機半導体におけるキャリア散乱機構の解明と高移動度化への展開
Project/Area Number |
19K15652
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
鶴見 淳人 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, NIMSポスドク研究員 (30827431)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 低周波ラマン分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
高移動度有機半導体の単結晶は高い並進対象性を有するために伝導キャリアの波動関数が多数の分子に非局在しており、バンド伝導的な電気伝導が実現している。それらの材料においては、キャリアの平均自由行程が格子定数と同等であるために、単結晶の無機半導体と比較して低移動度が低い。本研究では、有機半導体の移動度を限定しているフォノンモードを調べるために低周波ラマン分光測定を利用した研究を行った。 高移動度有機半導体の代表的な材料であるルブレンにおいて、基板を曲げることで結晶に一軸的な歪みを印加した。ルブレンの移動度は結晶に圧縮性の歪みを印加するにつれ移動度が増加することが確認された。一方で同様の一軸性歪み下において低周波ラマン分光測定を行うと、室温以下のエネルギー領域における光学フォノンモードの固有振動数が変化していることが確認された。このことから有機半導体の移動度を決定づける要因として低周波の格子モードのフォノン散乱の寄与が大きいことが示唆された。 さらに、ブリックワーク構造を有する別の新規有機半導体においては、圧縮性の歪みを加えるにつれ移動度が減少する負の歪み効果が確認された。この有機半導体の分子配列は、一般的なヘリングボン構造の有機半導体と比較して分子が斜めに配列している。そのために有機半導体に歪みを加えた際に分子が基板面外方向に回るように結晶構造が変化したのだと、歪み下の結晶構造をDFTで計算した結果から分かった。有機半導体単結晶の歪み効果は 歪み下の分子振動エネルギーの変調が大きな要因であり、変調の度合いは結晶中の空間的な分子パッキングに由来すると考えられる。更に本材料においても低周波ラマン分光測定を行った結果、一般的な材料とはフォノンのエネルギーが逆向きに変化したことから、キャリアのフォノン散乱が移動度を定めている主要因であることが裏付けられた。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] High-performance, semiconducting membrane composed of ultrathin, single-crystal organic semiconductors2019
Author(s)
T. Makita, S. Kumagai, A. Kumamoto, M. Mitani, J. Tsurumi, R. Hakamatani, M. Sasaki, T. Okamoto, Y. Ikuhara, S. Watanabe, and J. Takeya
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Journal Title
PNAS fast
Volume: 117
Pages: 80-85
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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