2020 Fiscal Year Research-status Report
バーナル多面体解析による非晶質構造中の密度揺らぎと中距離秩序構造の解明
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19K15653
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川又 透 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90638355)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非晶質金属 / X線異常散乱法 / 逆モンテカルロシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度に実施したZr10Co90およびZr10Fe90非晶質合金のAXS (X-ray anomalous scattering)-RMC (Reverse Monte-Carlo simulation) 解析においては、割合の少ない構成元素(低比率構成成分)が剛体球充填構造(Dense random packing : DRP)とは異なる特殊な短距離秩序構造を示すことを、主な研究成果として明らかにした。申請者は、このような構造が現実の非晶質合金における密度および濃度揺らぎの形成に関連すると考え、令和二年度は新たにAl90Y10非晶質合金および広い組成範囲のNbxNi100-x(x=30-70)系非晶質合金を作製し、これらの非晶質合金のAXS-RMC解析を遂行した。NbNi非晶質合金においては、Nb濃度の変化に伴いNb-Nb部分二体相関の分布は明瞭に変化し、Nb濃度の低い合金組成においてGoldschmidt半径和よりも低距離および長距離側に分離したNb-Nb相関のピークが観察された。このNb-Nb相関を対象としてCNA(Common neighbor analysis)およびBernal多面体分布解析を実施した結果、短距離化および長距離化したNbNb相関の最近接相関は[666]CNおよび[444]CNに関連するCNA-indexを持つことが明らかとなった。一方で、中距離構造(部分二体相関の2ndピークに相当する箇所)の構造的特徴はDRPモデルとほぼ変わらないことが明らかとなった。[666]CNおよび[444]CNはそれぞれ4面体の連結構造および8面体構造の存在を示すものであり、非晶質金属の構造が基本的に4面体と8面体充填からなることを考慮すると、Nb-Nb相関の短距離化および長距離化は、最近接領域における密度ゆらぎの形成に寄与すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要なターゲットである遷移金属型非晶質非晶質合金の密度ゆらぎを議論する際に、AXS-RMCおよびCNA-Bernal多面体分布解析が有効であることを実証することができており、計画は概ね順調に推移していると考えられる。一方で、Al基非晶質合金の低比率構成元素を対象としたX線異常散乱においては、従来の遷移金属型非晶質合金とは特徴の異なる環境干渉関数が得られ、RMCシミュレーションから得られる計算値が十分に実験値を説明できていないため、精度を向上させるための方策を検討することが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、課題となっているAl基非晶質合金は、非晶質近傍の合金組成で近似結晶および準結晶を形成することおが知られており、準結晶由来の規則性の高い局所構造が非晶質中に存在することが考えられる。このような局所構造をRMCシミュレーションに導入するため、Al基近似結晶の結晶構造を、RMCシミュレーションにおける初期構造のユニットセル全体もしくは局所構的に採用することを検討している。
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Causes of Carryover |
(理由) 令和二年度に購入を予定していた銅ロール(単ロール液体急冷装置)に交換の必要を生じず、該当物品の購入を行わなかったため。 (使用計画) 主に旅費および実験消耗品購入の物品費として適切に使用する。
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Research Products
(1 results)