2019 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of New Non-Toxic Metal Halides for Optoelectronic Applications
Project/Area Number |
19K15655
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金 正煥 東京工業大学, 元素戦略研究センター, 助教 (90780586)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ハロゲン化物発光体 / ペロブスカイトLED |
Outline of Annual Research Achievements |
ハライド系ペロブスカイトは優れた光物性を有し、大気中で溶液法を用いた成膜が可能というメリットがある。そのため、発光素子への応用に向けた研究が活発に行われているが、解決すべき課題も山積している。その一つは、優れた特性を示す物質系が有毒元素である鉛系に限定されているので、非鉛系で優れた特性をもつ物質の創出である。申請者は、2018年にCu+の2量体が発光サイトとなる鉛フリーの青色発光体Cs3Cu2I5を報告した。この物質は、発光サイトが結晶構造内で量子ドットのように0次元の電子状態をもつので、極めて高い蛍光量子効率PLQY(~90%)を示し,実用的な青色発光材料として関心を集めている(Advanced Materialsに掲載。被引用数61回)。もう一つの課題は高効率LEDの実現である。これまでは、高いPLQYを示す低次元ハライド物質が専ら研究されてきたが、LEDの効率は低いままであった。これはLEDのような電流駆動素子には、電極から発光層への正孔と電子の輸送が加わるので、優れたキャリアの輸送特性が要求されるからである。申請者は、単独では低PLQYだが輸送特性に優れた3次元ハライド半導体を発光層とし、それに隣接する電子・正孔輸送層にバンド端の位置を大幅に制御できる透明アモルファス酸化物半導体(所属する研究室はその世界的メッカ)を採用すれば、発光層内に励起子の閉じ込めが可能になり、高い電流効率が実現可能と発想した。このアイディアで、駆動電圧3Vで100,000cd/m2という世界トップのEL(緑)素子を実現した。その成果はAppl. Phys. Rev.(2019)にハイライト論文に選出され、日経エレクトロニクス誌に「"光るペロブスカイト"が覚醒 -アモルファス酸化物がLEDとして"失われた10年"を打破」としてホットトピックスに取り上げられた。しかし、毒元素である鉛が使われていることが今後の課題となる。今後は毒元素フリーの新たな発光体を探索し、より優れたLEDの開発に挑む。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
近年、ペロブスカイト型ハロゲン化物の研究が多くされており、ELとしての有望な特性が数多く報告されていた。しかし、ELの場合は、太陽電池などで使われている3次元ペロブスカイト(CsPbX3)ではなく、2次元ペロブスカイトを用いた成果がほとんであった。これは低次元材料の場合、その電子構造が局在性を持つことからエキシトンの束縛エネルギーが大きく高いPLQYが容易に得られるためである。しかし、申請者はそのような局在された低次元材料の電子構造に着目した。ELでは、エキシトンを生成するための電子と正孔のペアが必要になり、たくさんのペアが生成されるほどEL性能が上がる。しかし、低次元材料のように局在された系では基本的に電荷輸送特性が劣ってしまい、十分な電荷供給ができないと考えられる。その故、本研究では低次元ペロブスカイトと3次元ペロブスカイトの発光特性と輸送特性をそれぞれ詳しく調べ、また比較を行った。その結果、3次元ペロブスカイトでは小さい励起子束縛エネルギーによって非発光再結合が優先的に起きるということを発見した。また、このような非発光結合は隣接している層とのエネルギーアライメントに大きく左右されることを明らかにした。このような3次元ペロブスカイトの問題点を克服するため、申請者は隣接した電気輸送層を用いてエキシトンを発光層の中に強く閉じ込められる指針を新たに提案し、これまでになっかた最高レベルのEL性能を実証した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究からは申請者は低次元材料より3次元材料がEL素子に適していることを明らかにした。多くの研究者が高い量子効率を示す2次元ペロブスカイトを用いてELを開発していたが、申請者は従来、太陽電池でよく使われていた3次元材料であるCsPbX3を用いて世界最高レベルの成果を得た。しかし、毒性元素である鉛が含まれていることによって実用化は難しいと考えられる。そのため今後は、毒性元素を含まない新たな3次元ハロゲン化物発光体を探索する。
|