2019 Fiscal Year Research-status Report
光電極/水溶液界面で起こる水分解反応の精密電気化学測定
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19K15670
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東 智弘 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (80762088)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エネルギー変換 / 光電気化学 / 水分解 / 固液界面 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽光エネルギーを輸送・貯蔵が可能な化学エネルギーへ変換する過程の一つに、半導体光電極を用いる水分解反応による水素生成がある。この水分解反応の効率をさらに向上させるためには、反応の舞台である光電極/水溶液からなる固液界面の設計が重要である。本研究は固液界面での水分子や共存電解質イオンの挙動を明らかにし、電子と正孔の移動過程を精査し固液界面での特異な現象に関する知見と理解を深め、それを界面の設計戦略に反映させることで、水分解反応の高効率化および太陽光-水素エネルギー変換効率(STH)の向上を目指している。 2019年度は600 nmまでの光を吸収して水を分解できる半導体光触媒である窒化タンタル(Ta3N5)に着目し、Ta3N5光触媒を透明基板上に固定化して光電極を作製し、酸素生成反応を検討した。酸素生成反応を促進する助触媒のNiFeOxをTa3N5光電極表面に修飾した。上記研究の過程で、酸素生成反応における電解液のpH依存性を評価したところ、強アルカリ性水溶液のときに高い効率で酸素を生成できることを明らかにした。NiFeOxの表面修飾量を増加させるにつれて酸素生成反応の活性が向上するが、修飾量が一定量をこえることでTa3N5の光吸収が低下し、その結果として活性が低下することがわかった。光電気化学インピーダンス測定の結果から、固液界面における抵抗値の増加によって酸素生成反応の効率低下を引き起こしていることが明らかになった。Hall効果測定の結果からTa3N5光電極のキャリア濃度は金属のキャリア濃度のオーダーに近いことが判明し、表面およびバルクの欠陥量を低減させる必要性が浮き彫りになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水の分解反応の舞台である固液界面を精査し、その結果に基づく界面設計を通して水の分解反応の効率向上を目指している。Ta3N5光触媒を絶縁性基板である石英に直接成膜して作製した光電極は、従来の導電性基板上に作製されたTa3N5光電極の性能に匹敵することが明らかになった。絶縁性基板上に直接作製することで、Ta3N5材料の半導体特性、電気特性などを、Ta3N5/基板界面での複雑な接合状態を考慮せずに議論することができるようになった。このことから、固液界面での水分解反応を現象論的のみならず実際に定量評価することができるようになった。また助触媒の担持方法やその効果を実際に光電気化学測定によって精査することで、得られた結果を次の材料設計および界面設計にフィードバックすることができるようになったという点においては研究が順調に進捗していると評価した。 光電極/水溶液界面での水分解反応において、反応種である水分子もしくはプロトンや水酸化物イオンの反応素過程およびバルクからの拡散過程をより詳細に描像する必要がある。光電気化学測定と分光測定を組み合わせてその過程を追跡する予定であり、そのためのセットアップはおおむね完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の成果を踏まえ、半導体光電極の作製法の改良や利用可能な助触媒材料の探索を進め、半導体バルクの特性定量化および固液界面の綿密な設計に基づき、水分解反応のさらなる高効率化を目指す。具体的には、Ta3N5半導体を絶縁基板上に直接成膜し、薄膜の電気特性をHall効果測定装置を用いてより詳細に解析する。このHall効果測定では、温度依存性や実際に光照射中での特性変化を追跡する予定である。光電気化学インピーダンス測定や走査プローブ顕微鏡測定および赤外反射分光測定による多元的な解析によって固液界面における水分解反応の物理化学機序を明らかにする。また酸素生成反応を促進する助触媒(電極触媒)の探索を継続することで、さらなる酸素生成反応の高効率化を目指す。具体的には、金属複合酸化物であるNiCoFeOxといった三元系の電極触媒の適用およびCoOx/IrOxといった階層的表面修飾によってその機能を最大化させることを狙う。 水の分解反応における電解液温度や照射光量が光電極の水分解効率や耐久性に及ぼす影響を検討するために、流通式水分解活性評価装置を活用する.また、光電気化学測定によって培った技術やノウハウを粉末系光触媒へ適用し、光電極系と粉末系との橋渡しを目指す。 上記の検討で得られた知見を(酸)窒化物・(酸)硫化物からなる光電極の作製および光触媒粉末の調製へ反映させることで設計指針を確立し、長波長側の太陽光を有効利用可能な光電極および光触媒シートの開発を進める.また長期間耐久性の向上も実用化には不可欠であるため、水分解反応中における光電極の劣化要因を特定し、固液界面の設計によって耐久性の向上を目指す。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響により、出席予定であった国内学会がオンライン討論会となり予定していた旅費支出がなくなったため。また繰り越した分は2020年度にて使用予定である。さらに物品費として研究を進めるための材料や試薬の購入に用いる予定である。
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Research Products
(3 results)