2020 Fiscal Year Research-status Report
光電極/水溶液界面で起こる水分解反応の精密電気化学測定
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19K15670
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東 智弘 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (80762088)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エネルギー変換 / 光電極 / 水分解 / 固液界面 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽光エネルギーを輸送と貯蔵が可能な化学エネルギーへ変換する技術の開発が求められている。その変換過程の一つに、半導体光電極を用いる水の分解反応による水素生成が挙げられる。この水分解反応をより高効率化するためには、固液界面の精密設計が重要な鍵技術となる。固液界面では半導体と水との接触によってバンドベンディングが生じ、その帯電界面へ励起キャリアを効果的に捕集する必要がある。固液界面で反応サイトとして振る舞う助触媒の開発に焦点を当てた。また、励起キャリアの移動過程を精査し固液界面での特異な現象に関する理解と知見を深め、それを界面設計戦略に反映し、太陽光-水素エネルギー変換効率(Solar-to-hydrogen: STH)の向上を目指した。 2020年度は、2.0 eVのバンドギャップを持つ可視光応答性光触媒の窒化タンタル(Ta3N5)の開発および表面修飾による酸素生成反応の高効率化と長時間耐久性の向上を目指した。Ta3N5光触媒をベースとする光電極を作製し、酸素生成反応を促進する複合酸化物系電極触媒による表面コーティングをおこなった。複合酸化物系電極触媒として、Ni、Fe、Coの組成比および表面被覆率を最適化した。上記研究の過程で、Ta3N5光電極表面における電極触媒の被覆率向上によって長時間安定性を向上させることができた。1.23 V vs. 可逆水素電極に電極電位を保持した状態で疑似太陽光(AM 1.5G)を照射すると、従来は照射開始から30分程度で電極性能が半減していたが、Ta3N5上における電極触媒の被覆率を増加させることで、酸素生成に由来する光電流を2時間以上に渡って安定して生成できるようになった。また水素生成用光電極と組み合わせることで、水を水素と酸素へ全分解可能な光電気化学セルを構築することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸素生成用光電極の酸素生成効率と助触媒の電気化学的特性の相関を明らかにすることができた。電気化学的に酸素生成反応を高効率に進行できる触媒を適切な表面被覆率で担持することで、光電流値と安定性が従来よりも大幅に向上させることができた。また、光電極の酸素生成反応の開始電位は、表面修飾する電極触媒の酸素生成過電圧と関係があることがわかった。複合酸化物系電極触媒を担持することで、酸素生成反応の開始電位をよりネガティブな電位側へシフトさせることができた。 前年度から引き続き、透明絶縁性の石英をTa3N5薄膜の基板に用い、その光電極の半導体特性および固液界面の特性に関する理解を深めることができた。p型の水素生成用光電極と組み合わせてタンデム型およびパラレル型の電気化学セルを構築し、ノンバイアスでの水の全分解反応を駆動させることができた。この光電気化学セルは疑似太陽光照射下で水を水素と酸素へ自発的に分解することができた。 以上のことから、本年度に得られた成果を次の材料設計および界面設計にフィードバックすることができるようになったという点で、本研究が順調に進捗していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の成果を踏まえ、光電極の作製法の改良や電極触媒材料の探索を進め、水の分解反応の更なる高効率化を目指す。半導体作製法に高真空成膜技術を用い、低欠陥でかつ半導体特性の良好な材料開発を目指す。固液界面での設計においては、光電気化学インピーダンス測定による反応機構解明、温度依存性評価による熱力学的解釈の深化、分光電気化学測定による表面準位の決定を進めていく。 水の分解反応では水素生成反応は2電子反応であり、酸素生成反応は4電子反応である。この反応は多電子反応であり、特に酸素生成反応では助触媒の価数変化に伴って反応を駆動していると予見される。その価数変化はredoxであるにもかかわらず、電気二重層に隠れて観測できていない可能性が高い。そこで、分光電気化学測定とACインピーダンス測定の相補的検討によって、その挙動を明らかにしていく。分光電気化学測定用のセットアップはおおむね完了しており、最終年度での取り組みによって本研究を完成させる。また、上記の検討で得られた知見を(酸)窒化物・(酸)硫化物からなる光電極の作製および粉末系光触媒の調製へ反映させ、より高性能な水分解用半導体材料の開発を推進する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響により、オンライン討論会となり予定していた旅費支出がなくなったため。当初予定していたよりも物品費を抑えることができたため、繰り越した分は引き続き2021年度にて使用予定である。さらに物品費として研究を進めるため、材料や試薬の購入に用いる予定である。
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Research Products
(3 results)