2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of stand-alone artificial photosynthetic systems consisting of metal complex and semiconductor by photoelectrochemical methods
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19K15673
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
熊谷 啓 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80761311)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 人工光合成 / 光電気化学 / 光触媒 / 半導体 / 金属錯体 / 複合材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「光電気化学的手法による金属錯体と半導体から成る自立型人工光合成系の創出」では、光電気化学的手法を用いたボトムアップ型アプローチによって金属錯体と半導体の異種の光触媒を複合体へと機能化した集積型の光反応デバイスの開発と評価を行っている。 今年度は、主に光還元反応場(還元側光触媒)となる、水中で光触媒反応を駆動可能な金属錯体複合電極について、その高活性化を狙った光触媒材料の開発と電極構造設計を行った。電極表面での金属錯体安定化を狙い、Ru(II)トリスビピリジンタイプの光増感剤を電極へ電気化学還元によりポリマー化することによる固定化を試みた。主にCuGaO2半導体粒子からなる電極において、光還元反応に起因する光電流を数倍まで増大することに成功したほか、水溶媒中での金属錯体の脱離抑制効果も確認された。これらの電極は、金属錯体の光励起に起因する水素生成やCO2還元に活性を示し、その活性と選択性はポリマーの構造により変化した。 また、光触媒の足場となる半導体粒子の高性能化を狙い、種々の合成法や後処理を試みた。その中で、トップダウン手法として遊星ボールミルでの粉砕の条件を最適化することにより、CuGaO2半導体粒子中のCuの酸化を抑制しつつ、特性を損なうことなく数ミクロン程度あった粗大な二次粒子を、10~数100 nm程度にまで微細化できることを見出した。この粒子を用いて作製した電極に金属錯体光増感剤を吸着させて作製した光電極は、粉砕前の粒子を用いたものに比べて大きな光電流を示すことから、半導体粒子の緻密化・高表面積化により光電極の活性が向上したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、光電気化学的手法を用いたボトムアップ型アプローチによる金属錯体と半導体から成る自立型人工光合成系の実現を目指し、還元反応側(金属錯体分子)と酸化反応側(半導体)それぞれの目的反応に即した反応場(光触媒電極)の個別設計と、更にそれらの集積化による自立型デバイスの開発を目的としている。 本年度においては、全体の反応の中で特に律速のプロセスになりうる還元側反応場について、金属錯体・半導体担体の両面から開発を行い、その活性向上のための開発指針の知見を見出し、一定の進展を見た。 一方で、本年度は本研究課題初年度であるが研究代表者の異動に伴い、年度初めには研究環境の整備の必要性が生じた。また年度末においてはCOVID-19の全国的な流行により、共同研究先での出張を伴う実験や成果発表等を行うことができなくなった。これらによって生じた研究計画の遅延を鑑み、進捗は伴うものの全体としてやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、ここまでに得られた還元側反応場の高活性化への知見を深め、複合系における高効率化の指針をより詳細に検討する。特に、本年度効果が見いだされた手法を組み合わせつつ、反応性の制御と生成物の多様化を狙い触媒部の設計へと展開していく。 また、最終的な目標である集積化においては、二段階励起系の集積化を見据え、(1)光還元反応場に対し電子を供与しながら自身では水の酸化反応を駆動する光酸化反応場の開発 と (2)集積化の検討 を進める。 これらを通して、可視光をエネルギー源、水を電子源とし駆動する自立型人工光合成系の設計指針の確立とその実現を目指す。 ただし、研究開始時に想定していた共同研究先での出張を伴う実験は、COVID-19の終息時期が不明瞭のため、代替の設備や実験手法の検討を行う可能性がある。
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Causes of Carryover |
当初予定していた物品費等を、異動後の機関の設備・工場での製作等により補うことができたため。また、COVID-19の流行により予定していた共同研究先での実験や学会参加のための出張がキャンセルとなり旅費が使用できなかったため。次年度は、本研究遂行のための物品費、あるいは成果公表のための学会参加費等の一部として使用していく予定である。
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