2020 Fiscal Year Research-status Report
無機層状化合物を添加したゲル中における電解質イオンの運動性に対する支配因子の解明
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19K15681
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
大谷 優太 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 助教 (20807656)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲル電解液 / 無機層状化合物 / 電気化学インピーダンス / ヨウ素イオン / 色素増感太陽電池 / 三ヨウ化物イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
色素増感型太陽電池の開発において、系の安定性を目的とした電解液のゲル化が検討されているが、電解質イオンの運動性の低下が大きな問題として存在している。このゲル中のイオンの運動性を向上し、その挙動に対する支配因子を明らかにするために、無機層状化合物として粘土鉱物(Montmorillonite)のゲル電解質への添加を行い、さらに異なる構造を持つヨウ化イミダゾリウムを電解質として用いたイオンの運動性の評価を行った。電気化学インピーダンス測定の結果、昨年度までに、電解液のゲル化前後で電解質イオンの運動性が変化し、粘土鉱物をゲル電解液に添加することで拡散抵抗が減少することが観測された。 今年度では、様々なヨウ化イミダゾリウム(1-Methyl-3-propyl imidazolium iodide: MP、1,2-Dimethyl-3-propylimidazolium iodide: DMP、1-Hexyl-2,3-dimethylimidazolium iodide: HDM)を電解質として用い、無機層状化合物を含んだ電解液ゲル中でイオン運動性にどの様な変化が引き起こされるのかについて検討した。 ゲル中やアセトニトリル溶液中の三ヨウ化物イオンの運動性は、電気化学インピーダンス測定から求めた該当イオンの拡散係数の大きさから評価した。この測定の結果、三ヨウ化物イオンの運動性の低下率(1-ゲル中での拡散係数/溶液中での拡散係数)を求めたところ、HDMが一番小さくなった。この結果はイミダゾリウムイオン構造によって無機層状化合物との相互作用が変化し、その変化が三ヨウ化物イオンの運動性に影響を与えていることを示唆しており、このことから、カウンターカチオンの構造とゲル化剤との相互作用を制御することによるイオン運動性減少の抑制を行うための足掛かりを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度における目標は、無機層状化合物と電解質イオンとの相互作用の変化によるイオン運動性への影響を見出すことにあった。イオン運動性の減少率を比較した結果、電解質イオンと無機層状化合物との相互作用を制御することで系中イオンの運動性を制御し、電池用電解液としての機能向上を行う足掛かりを得ることはできた。しかし、無機層状化合物と電解質イオンの構造との相関を観測するための検討は不十分であり、相互作用の特定には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、いまだ不十分である粘土鉱物と電解質イオンとの関係についての検討を中心に行う。具体的には溶媒や構造の異なる電解質を用いて検討したいと考えている。引き続き、三ヨウ化物イオンの拡散係数の変化からゲル電解液中におけるイオン運動性に対する支配因子の解明を目指し、加えて作製したゲル電解液を色素増感型太陽電池に組み込み、光電変換効率を評価する。 さらに進んでは、イオンの運動性だけでなく系の安定性に関しても検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
予算の用途は主に①実験に使用する器具・試薬の購入、②学会発表への出張旅費であった。これらに関して①研究の進捗が計画よりもやや遅かったこと、②“新型コロナウイルス感染症”対策に関連して学会等の開催がオンラインになることで出張旅費が削減されたことが理由で、使用計画を変更する必要が生じた。次年度では当該年度において十分ではなかった粘土鉱物を用いた検討に使用する試薬、また、電池特性評価に用いる器具等に使用する予定である。
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