2021 Fiscal Year Research-status Report
無機層状化合物を添加したゲル中における電解質イオンの運動性に対する支配因子の解明
Project/Area Number |
19K15681
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
大谷 優太 北見工業大学, 工学部, 助教 (20807656)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ゲル電解液 / 無機層状化合物 / 電気化学インピーダンス / ヨウ素イオン / 色素増感太陽電池 / 三ヨウ化物イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
色素増感太陽電池の電解液のゲル化を通して、ゲル中でのイオン運動性の評価を検討した。これまで検討から、電解液をゲル化することで系中の三ヨウ化物イオンの運動性は低下するが、そのゲル電解液へ有機修飾粘土を添加することでイオン運動性の向上が確認された。 2021年度は三ヨウ化物イオンのカウンターカチオンの種類によって、系中への粘土添加の影響が変化するか否かを検討した。カウンターカチオンとしてはリチウムイオン(Li+)と1, 2-dimethyl-3-propylimidazorium (PIm)、1-hexyl-2, 3-dimethylimidazorium (HIm)の3種で検討を行った。その結果、イミダゾリウム誘導体であるPIm、Himにおいては粘土添加時に三ヨウ化物イオンの運動性が低下したが、Li+は粘土添加時に三ヨウ化物イオンの運動性の向上が観測された。 また、系の安定性に関する検討も行った。室温下かつ密閉系ではなく開放系にて三ヨウ化物イオンの拡散係数を測定し、系の安定性を評価した。液体系、ゲル系ともに開放系におけるイオンの拡散係数は時間とともに減少したが、拡散係数の変化率が0時間時点と比較して20%以下となった時間を比較すると、液体系の場合は約3時間であったのに対し、ゲル系の場合は約7時間であった。この結果から、液体系よりもゲル系の方が安定性も高いことが確認できた。 2021年度の検討から、粘土鉱物が添加された系において三ヨウ化物イオンのカウンターカチオンのイオン種によって三ヨウ化物イオンの運動性が変化することが観測され、粘土鉱物添加による系の粘性増加といったような検討した系に共通した因子ではなく、カウンターカチオンと粘土鉱物間、三ヨウ化物イオンとカウンターカチオン間の相互作用がより支配的な因子であるという推論を実証するための足掛かりが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度の目標は、無機層状化合物と電解質イオンの運動性との相関を観測することであった。検討の結果、三ヨウ化物イオンのカウンターカチオンの構造によって変化しうることが判明したが、相互作用の因子の絞り込みには至っていない。 また、系の安定性に関する検討を開放系にて行い、三ヨウ化物イオンの拡散係数の経時変化の割合で評価を行った。その結果、ゲル系の方がより長い時間イオンの運動性を維持できることが明らかとなり、系の安定性の向上については一定程度の成果を確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度においてはゲル中のイオン種が添加した粘土鉱物から影響を受けていることが明らかになったが、支配因子の特定には至っていない。今後はイオン種の変更に加えて、添加する粘土鉱物やゲル構造の主成分であるポリマー種の変更を検討したい。 粘土やポリマー種の変更においてはゲルの調製方法から検討し、その後電気化学インピーダンス測定により三ヨウ化物イオンの運動性を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの蔓延に伴う学会の中止やオンライン化に伴い、出張費としての使用がないこととが主な理由である。2022年度は予算を試薬などの消耗品の購入に使用する予定である。
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