2020 Fiscal Year Research-status Report
Aβオリゴマー選択的プロテアーゼの開発に基づく神経変性機構の解析
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19K15694
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
塚越 かおり 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20708474)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アミロイドβ / アルツハイマー病 / プロテアーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病はアミロイドβ(Aβ)の凝集体・Aβオリゴマーの細胞障害性により引き起こされる神経細胞の異常が発症に関与すると示唆されている。しかし、Aβオリゴマーは細胞間質液・細胞膜上・リソソーム内に局在しており、どこでAβオリゴマーが病的な機能を発揮しているかは不明である。そこで本研究では、Aβオリゴマーを選択的に分解するプロテアーゼに、Aβオリゴマー選択性を付与するための分子認識素子であるAβオリゴマー結合ペプチド(Oligomer-Binding Peptide; OBP)を融合させたOBP融合プロテアーゼを開発する。細胞の特定の部位にOBP融合プロテアーゼを発現させる事で、Aβオリゴマーを部位特異的に減少させた“Aβオリゴマーノックダウン細胞”を作製することで、Aβオリゴマーが神経変性能を発揮している部位の特定を目指す。 本年度はOBP融合ネプリライシンの構築を行った。ネプリライシンはAβの分解に関与する亜鉛メタロプロテアーゼである。これまでに、Protein Data Baseよりネプリライシンの立体構造を検索し、分解活性を落とさずにOBPを融合するための融合箇所を選定した。融合箇所のデザインに則って、OBP融合ネプリライシンの遺伝子を構築し、OBP融合ネプリライシンを調製した。活性測定の結果、OBP融合ネプリライシンはAβオリゴマーの分解に十分な活性を有することが明らかになった。狙い通り活性を保ちつつ、OBPをもつ新規ネプリライシンを開発できたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はOBP融合ネプリライシンの構造遺伝子構築、哺乳類細胞を用いた組み換え生産、精製、酵素活性測定を行った。ネプリライシンの立体構造が既に解析されていたことから、その構造情報を利用し、OBPと精製用のタグの位置を決定して遺伝子構築を行なった。その結果、精製度の高いOBP融合ネプリライシンを得ることに成功した。 ペプチド基質を用いた酵素活性測定の結果、その活性値は15 mU/mgの活性であった。1 nmolのペプチドを1分間に切る酵素活性を1ユニットと定義するので、今回開発したOBP融合ネプリライシンは1 mgあたり15 nmolのAβオリゴマーを1分間で切る活性をもつことが示された。Aβの脳組織内での総量が多くとも数百pmol/ g tissue程度であることを踏まえると、OBP融合ネプリライシンはAβオリゴマー実験に用いるために十分な酵素活性を有すると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、OBP融合ネプリライシンのAβオリゴマー結合能を評価する。実は、一度実験を試みたが、Aβオリゴマーの分解活性を阻害しないまま実験を行なったためか、全く結合能が観察されなかった。そのため、OBP融合ネプリライシンに対してネプリライシンの活性阻害剤を添加後、再度結合能評価を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外輸入品の実験試薬の納品が遅れたため、次年度使用額が出た。2021年度に入ってすぐに購入予定だった試薬は発注したので、次年度使用額は上半期で使い切ることとなる見込みである。
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Research Products
(8 results)