2019 Fiscal Year Research-status Report
化学反応を駆使した多官能基性天然物の構造と作用機序研究
Project/Area Number |
19K15706
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
入江 樂 横浜市立大学, 理学部, 助教 (50835238)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 天然物 / 誘導体化 / 構造解析 / アミド結合 / 加水分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋天然物ポエシラストリン類は、分子ツールや創薬シードとして有望なV-ATPase阻害剤である。しかしながら深海に生息する海綿動物由来の微量成分であることに加え、複雑に官能基化されているため、立体配置を含めた完全な構造決定がなされていない。 本研究代表者は、応用研究への第一歩である構造決定に向けて、分子サイズの大きな天然物を構造解析のしやすいフラグメントに分解することを当面の目標とした。まずポエシラストリン分子中に3箇所含まれる、アミドと水酸基が隣接する部分構造(N-アシル-β-アミノアルコール)に着目した。通常、比較的安定な結合とされるアミドの加水分解には強条件が必要であり、多くの官能基を有するポエシラストリンのような天然物に対しては、望まぬ副反応が避けられない。ただしアミドの隣に水酸基が存在する場合は、これを足掛かりにアミド結合の安定性を崩し、加水分解を受けやすくなるような誘導体化を施すことが可能と考えた。 そこで今年度は、N-アシル-β-アミノアルコールを部分構造に含むモデル化合物を設計・化学合成し、反応条件の検討を行った。結果として、加水分解を穏和な条件で実現する一連の反応を見出した。この部分構造は他の有用天然物にもしばしば見られ、同様の構造解析を志向した分解反応や、構造活性相関研究にあたり有用な手法となりうる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
適切なモデル化合物を合成し検討を行うことで、天然物(ポエシラストリン)の稀少なサンプルを消費することなく、対象とする部分構造(N-アシル-β-アミノアルコール)の誘導体化条件を効率的に見出すことができた。以上は本研究の目的のひとつである、ポエシラストリン類の完全な構造決定に向けて順調な進展と考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
天然物(ポエシラストリン)を用いて、上述の条件を微量スケールの分解反応に適用可能か検証し、必要に応じて反応条件のチューニングを行う。さらにスケールアップによりフラグメントを単離することができれば、各種スペクトルデータ解析、さらなる誘導体化、合成標品との比較などによって立体化学を明らかとし、ポエシラストリン類の完全な構造決定を達成する。また各種類縁体や誘導体の生物活性を細胞毒性試験で定量し、天然物と比較することで構造活性相関情報を得る。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により研究で用いる化合物(ポエシラストリンなど)の供給源となる生体試料の採集ならびに学会発表が行えず、予定していた旅費の支出がなくなったことが主として挙げられる。 次年度は、必要に応じてこれらの用途に使用する予定である。
|