2019 Fiscal Year Research-status Report
第三周期元素とアジドの特性を利用した切断可能リンカーの開発
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19K15711
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西山 義剛 名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (90755357)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 第三周期元素 / 有機硫黄化合物 / スルホンアミド / 有機リン化合物 / ホスフィン / アジド / 切断可能リンカー / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
ケミカルバイオロジーでは、通常の条件では安定である一方で、特定の条件では円滑に切断できるリンカーの開発が求められている。今までにもいくつかの切断可能リンカーが開発されてきたが、安定性と切断条件の穏和さの両立などに課題を抱えていた。これに対して、申請者は、第三周期元素の特性を活用することによって、ケミカルバイオロジー研究に応用できる理想的な切断可能リンカーを開発できると着想した。今年度は、アジド基のα位にヘテロ原子を有する化合物を設計し、これらの合成法の検討を行った後に、合成した化合物の安定性、切断条件の検討を行った。その結果、アジド基のα位にスルホンアミド部位を有する、α-アジドアルカンスルホンアミドが切断可能なリンカーとして理想的な性質を備えていることを見いだした。具体的には、対応するアルカンスルホンアミドに対して強塩基を作用させた後に、スルホニルアジドを作用させることで、効率的にα-アジドアルカンスルホンアミドを得られることを見いだした。また、得られた化合物は、水存在下にてホスフィンを作用させることで迅速に反応し、対応するケトンとアミンへと分解することを明らかにできた。さらに、本スルホンアミドは、酸や塩基などの過酷な条件に対しても十分な安定性を示し、本リンカー部位を含む分子プローブの合成中や生体内環境における、望まぬ切断が進行しにくいことも確認できた。興味深いことに、アジド基のα位にアルコキシ基を有する化合物でも同様にホスフィンでの切断を確認できたが、酸素原子の豊富さのためか、酸条件に脆弱であり、スルホンアミド部位を有する化合物とは大きく異なる性質を有することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アジド基のα位にヘテロ原子を有する化合物を種々合成し、その反応性を明らかにしていく中で、切断可能リンカーとして理想的な性質を示すα-アジドアルカンスルホンアミドを見いだすことができ、当初の研究計画の通り、本研究における基盤的な知見を得ることができた。さらに、酸素原子のような第二周期元素を用いた時には合成が難しく、酸性条件に不安定である一方、第三周期元素である硫黄原子を含むスルホニル基の性質を利用することで、簡便な合成と高い安定性を実現できることを明らかにでき、計画当時に想定していた以上に第三周期元素としての性質を明確にすることができたことから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、今回見いだしたα-アジドアルカンスルホンアミドの両末端に機能性分子を有するプローブ分子を合成し、ケミカルバイオロジー研究に応用する。具体的には、今まで検討に用いてきたα-アジドアルカンスルホンアミドの構造を改変し、その両末端に連結可能な官能基を備え付けた化合物を合成する。その後、その官能基を足がかりに、2つの機能性分子を順次連結させることで、切断可能リンカーを中心に持つ分子プローブを合成する。最後に、この分子プローブを用いて、タンパク質の精製などに利用することで、ケミカルバイオロジー研究に応用可能な技術であることを示す。
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Causes of Carryover |
当初は、リンカー部位の大量合成を初年度で行うことを計画していたが、リンカー部位の効率的な合成法を想定より早期に確立できたため、今年度は、大量合成の前に、リンカー部位の化学的な性質を明らかにすることに注力した。そこで、大量合成用の試薬類の予算として確保していた分を次年度に使用することにした。
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