2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞毎の脂肪酸β酸化不均一性とその制御メカニズム解明のためのケミカルツール開発
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19K15715
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内之宮 祥平 九州大学, 薬学研究院, 助教 (10770498)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ケミカルバイオロジー / 代謝経路 / 脂肪酸β酸化 / 蛍光イメージング / ケミカルプロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
疾病細胞では様々な代謝経路の活性が通常細胞と比べて大きく変化しているため、代謝経路活性の測定及びその原因を探索する手法の開発は疾病メカニズムの理解や創薬に不可欠である。本研究ではエネルギー生産経路の1つである脂肪酸β酸化に着目し、ケモプロテオミクスと蛍光イメージングを相補的に行うケミカルプローブを開発することで、細胞レベルでの脂肪酸β酸化活性の不均一性と活性変化のメカニズムを解明することを目的とする。本プローブは、脂肪酸部位と、アルキンを有するキノンメチド部位からなる。プローブが脂肪酸β酸化を受けるとアルキンを有するキノンメチドが放出され、近傍のタンパク質を網羅的に共有結合ラベリングする。続いてクリック反応によって蛍光色素を標識することで脂肪酸β酸化活性の蛍光イメージングを、ラベル化タンパク質を単離することでケミカルプロテオミクスをそれぞれ行う。2019年度ではこの戦略が機能することを確かめるため、様々な構造のプローブを合成し細胞での機能評価を行った。プローブを肝臓がん由来のHepG2細胞に添加し固定化したのち、クリック反応によって蛍光色素であるローダミンを標識し共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、細胞からローダミン由来の蛍光が観察された。この蛍光は脂肪酸β酸化の阻害剤を添加した際には消失したことから、プローブが脂肪酸β酸化の活性を検出可能であることが分かった。また、SDS-PAGEによって細胞内の様々なタンパク質がラベル化されていることも分かった。さらに、キノンメチド部位の反応性を調整することで、ラベル化効率を向上させることにも成功した。以上より、2019年度では脂肪酸β酸化活性を蛍光イメージングするできること、また細胞内の様々なタンパク質を脂肪酸β酸化活性依存的にラベル化することにも成功し、本戦略が機能することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度では、脂肪酸β酸化活性の蛍光イメージングを行えること、また細胞内の様々なタンパク質を脂肪酸β酸化活性依存的にラベル化可能であることを見出し、本戦略のproof-of-conceptを達成した。そのため本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度ではプローブの構造を検討することで、細胞内タンパク質のラベル化効率およびラベル化網羅性の向上を行う。また、SILAC法によってラベル化タンパク質の同定を行う。特に、ミクロ環境による脂肪酸β酸化活性の変化に伴いラベル化タンパク質がどのように変化するかをSILAC法によって検討することで、脂肪酸β酸化活性を変化させる要因タンパク質を同定する。さらに、本戦略を培養細胞ではなく心筋細胞や肝臓細胞などの疾病モデル細胞に適応することを目指す。
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Causes of Carryover |
2019年度の研究が順調に進み、予想した以下の合成試薬での実験となったため、物品費に若干の余が生じた。2020年度では細胞実験などを予定しているため、2019年度の繰越予算は細胞実験に必要な試薬の購入に使用する。
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Research Products
(13 results)