2020 Fiscal Year Research-status Report
低施肥栽培を目指した土壌微生物によるプライミング効果発現機構の解明
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19K15721
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
早川 智恵 宇都宮大学, 農学部, 助教 (10725526)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 黒ぼく土 / プライミング効果 / 13C-セルロース / 窒素採掘 |
Outline of Annual Research Achievements |
本提案課題では、北海道の堆肥連用圃場の土壌を用いて、(1)『プライミング効果』による難分解性有機物からの窒素・リン放出を実証、(2)プライミング効果を駆動する微生物群集および最適環境条件(易分解性有機物量、炭素/養分比)を特定した上で、技術化の可能性を栽培試験による検証を行う予定である。1年目は、対照区の森林土壌にセルロースを添加した場合には、セルロース添加による微生物バイオマスの増殖に伴い、微生物による腐植からの窒素の獲得が促進されることが示唆された。一方、増殖した微生物バイオマスの減少とともに無機態窒素量の増加が見られたものの、養分放出の促進効果はごく短期間であった。これは、セルロース添加区において、微生物バイオマス中に長期間に渡って相対的に多くの窒素が保持されたためであると考えられる。2年目は引き続き培養実験を実施し、表層土に比べて埋没腐植土では微生物バイオマス全量は小さいものの、真菌/細菌比は埋没腐植の方が大きく、埋没腐植土では真菌がプライミング効果により寄与している可能性が示唆された。本成果は国際学会であるEGU2020 (European Geosciences Union)、日本土壌肥料学会および日本生態学会にて発表した。また、成果の一部をSoil Science and Plant Nutrition誌(Special issue, New frontiers of the nature, function and use of volcanic soils)に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は特定の微生物群の定量手法の検討を行い、ターゲット微生物を定量PCRによって定量することが可能となったものの、新型コロナウイルスの影響により実験を中断・制限せざるを得なかったため、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
中断・制限された培養実験および遺伝子解析実験については、再開・やり直しを実施し、プライミング効果に影響を及ぼす微生物群の特定を行う予定である。ただし、今年度も引き続き入手困難な消耗品・試薬類があるため、遺伝子解析については外注するなどの代替方法が可能か同時に検討を続けている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により現地開催が予定されていた国際学会および国内学会が全てオンライン開催に変更され旅費を使用しなかったことと、研究施設への立ち入り制限、消耗品・試薬類の入手困難等の影響により、実験・研究活動が中断されたため、予算の一部を繰り越した。コロナ禍が収束すれば、次年度の学会等への旅費や、再開する培養実験・遺伝子解析実験等に使用する計画である。
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