2021 Fiscal Year Annual Research Report
生物利用可能リンはどのように形成されるか?―リン酸酸素同位体比を用いた培養実験―
Project/Area Number |
19K15723
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石田 卓也 広島大学, 先進理工系科学研究科(総), 助教 (70759571)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | リン酸酸素安定同位体比 / リン動態 / 同位体混合モデル / 固相抽出法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、土壌における生物に利用可能リンの形成メカニズム解明に向けて、リンのトレーサーとなるリン酸酸素安定同位体比を用いた土壌培養実験法を確立することを目的として、(1)リン酸酸素安定同位体比分析の主要なボトルネックとなっていた前処理法の改良と(2)培養実験法の検討を行った。 (1)前処理法の改良:リン酸酸素安定同位体比分析法は、試料中のリン酸イオンから純粋なリン酸銀を得るための純化処理が必要となるが、その操作には多大な労力と経験に基づく調整が必要であることから同分析の普及は進んでいない。その解決のため2年目にジルコニウム担持樹脂を用いた固相抽出法を開発し、本年度はリンの存在形態とその存在量を定量するための方法として広く用いられている連続抽出法に適用させるための検討を行った。各抽出段階に合わせた調整と操作を加えることで生物利用可能画分を含む画分ごとに測定できるように固相抽出法を改良することができた。 (2)培養実験法の検討:1~2年目の成果を取りまとめ、培養実験によって得られた形成メカニズムに関する知見と培養実験の発展のための課題を整理した。培養実験前後のリン酸酸素安定同位体比の変化から、酵素による有機態リンの無機化が土壌における生物利用可能リンの主要な形成メカニズムであることが示唆された。培養実験によって生物利用可能リンを形成する各プロセスの寄与を定量的に評価するためには、培養期間、培養液の組成、有機態リンの無機化に係る同位体分別係数の再検討が必要であると考えられた。
|