2020 Fiscal Year Research-status Report
黒色Aspergillus属特異的な細胞壁多糖ニゲランの機能と生合成機構の解明
Project/Area Number |
19K15737
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
上地 敬子 琉球大学, 農学部, 助教 (70733426)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ニゲラン / α-1,3-グルカン / Aspergillus luchuensis / 細胞壁多糖 / 窒素飢餓 |
Outline of Annual Research Achievements |
黒麹菌 Aspergillus luchuensisなどの一部のAspergillus属糸状菌は窒素飢餓時にニゲランという細胞壁多糖を生産することが知られている。しかしながらニゲラン合成のメカニズムや生理学的な意義については不明な点が多く知見が少なかった。これまでにA. luchuensisを供試菌として窒素源の存在/非存在下でのRNA-seq解析,遺伝子相補試験を実施し,ニゲラン合成酵素遺伝子を同定した。本年度は,ニゲラン合成酵素遺伝子に隣接するふたつの遺伝子の翻訳産物がニゲランの生産量に影響することに加え,分子量の制御に関わることを明らかにした。このニゲラン合成関連酵素の酵素学的特性を明らかにするために大腸菌や糸状菌を宿主とする組換え発現系を構築した。ニゲラン合成酵素は複数のドメインを持つ膜タンパク質であり,細胞内ドメインでニゲランの基本構造(D-グルコースがα-1,3-結合とα-1,4-結合を交互に繰り返す構造)が合成されると推測される。この構造制御についての知見を得るために推定触媒残基や基質の保持に重要だと推測されるアミノ酸残基に変異を導入したニゲラン合成酵素遺伝子導入株を作製し,ニゲラン生産能への影響について検討したが,ニゲラン生産能を確認することが出来なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度からの課題であったニゲラン合成関連酵素のニゲラン分子量への影響についてはおおむね解決することが出来た。しかしながら細胞内ドメイン変異導入株の作製では,抗生物質耐性やPCR等で遺伝子断片が正しく挿入され,またRT-PCRによってニゲラン合成酵素遺伝子が転写されていることが確認できたにも関わらず,いずれの変異導入株においてもニゲラン生産は確認できなかった。この原因については現在検証中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ふたつのニゲラン合成関連酵素はニゲランの生産量(菌糸中の蓄積量)と分子量に影響を及ぼすことが確認できたため,次年度は組換え酵素を用いて酵素学的特性について検討し,ニゲラン合成への知見を集積する。また,両酵素の働きによってニゲラン合成量そのものを増減させるのか,あるいは両酵素が合成されたニゲランを分解して培地中へ放出することで菌糸中のニゲラン量を制御しているのかについて検討する。細胞内ドメイン変異株の作製については,原因が追究できれば現在の方策を進める。これと並行してニゲラン合成酵素の各ドメインを個別に組換えタンパク質として発現させる系の構築にも取り組み,in vitro でニゲラン合成について検討を進める。これに付随するニゲランの合成初期基質候補の検討も進める。
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Causes of Carryover |
当該年度はコロナの影響で研究時間の確保が難しく,また研究の進捗状況も芳しくなく,予定していた実験まで到達できなかった。次年度前半には予定していた実験が行える予定であるため,当該年度に予定していた物品を次年度購入して研究に努める。
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