2019 Fiscal Year Research-status Report
サンゴ常在菌が産生するサンゴ菌叢維持分子Homeostaticsの同定
Project/Area Number |
19K15739
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
三浦 夏子 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (80724559)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Ruegeria属細菌 / Vibrio coralliilyticus / 分離共培養 / 抗菌タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
①サンゴ常在菌Ruegeria 株が産生する抗 V. coralliilyticus 分子の同定 V. coralliilyticusに対して生育阻止活性をもつ2株と持たないRuegeria属細菌2株の新規ゲノムを解析し、ゲノム比較を行った。遺伝子予測ソフトウェアを用いて抗菌タンパク質を探索した結果、生育阻止活性をもつRuegeria属細菌間で保存される抗菌タンパク質候補遺伝子を見出したため、大腸菌および酵母による異種発現系を用いて候補タンパク質の精製と活性測定を試みた。その結果、大腸菌を宿主とした発現系で目的タンパク質の発現が確認できたが、ほとんどが不溶性画分に存在した。並行して抗菌活性をもつ株の培養液上清から各種カラムを用いて抗菌活性のある画分を粗精製したところ、目的分子は20-40 kDaの高分子であることが推定でき、続くSDS-PAGEにより複数のバンドが確認できた。 ②V. coralliilyticusとRuegeria属細菌を用いた共培養条件の検討 小型分離共培養容器を用いて種々の条件検討を行い、V. coralliilyticusとRuegeria属細菌の共培養を行ったところ、V. coralliilyticusに対して一定以上の割合Ruegeria属細菌が存在するとV. coralliilyticusの生育がRuegeria属細菌の濃度依存的に抑制されることを示すことができた。また、Ruegeria属細菌を混合培養時やフィールドでも検出可能とするための新規プローブを開発した。さらに、両者の相互作用に関わる新たな現象を見出したため、その原因分子について現在解析を進めている。 上記の結果を踏まえて、2020年度は引き続きV. coralliilyticusとRuegeria属細菌間で働く生理活性分子の同定と共培養条件下での各細菌の機能について解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前に得られた結果と併せてサンゴ常在菌Ruegeria 属細菌株が産生する生理活性物質は20-40 kDaの分泌タンパク質であることが推定できたが、抗菌物質を同定するためには予測・精製した分子を異種発現し、その活性を確認する必要があり、この点が課題として残された。一方でRuegeria属細菌特異的な新規プローブを開発できたほか、共培養容器を用いた条件検討は概ね終了し、次年度の目標の1つとしていた新規な細菌間相互作用を見出すことができるなど、想定以上の進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
Ruegeria 属細菌の定性プロテオーム解析によってはV. coralliilyticusの生育阻止に働く分子を予測することが困難であったため、2020年度はSDS-PAGEにより分離に成功した活性画分由来タンパク質についてMALDI-MSを用いて同定する。異種発現系では大腸菌による発現系の宿主・ベクター・発現条件を検討するほか、無細胞発現系を併用して可溶性タンパク質の発現を試みる。さらに、V. coralliilyticusとRuegeria属細菌間で働く新規な生理活性分子を同定し、各生理活性分子がサンゴ細菌叢で機能する条件について検討する。
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Causes of Carryover |
遺伝子実験用プライマー費用の金額が予定より下回り、少額であるが次年度使用額が生じた。次年度の予算と合算して、物品の購入費に充てる。
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Research Products
(6 results)